検索

【Jリーグ】柏レイソル指揮官リカルド・ロドリゲスは名将か 監督選びの根拠が薄弱すぎる

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 たとえば、日本代表を率いる森保一監督は「名将」と言えるか?

 サンフレッチェ広島でJリーグを連覇しただけでも「名将」だろう。決して簡単なことではない。はっきりとしたプレーモデルも提示した。また、日本代表を率いて8年目になるが、その第1期はW杯アジア最終予選を勝ち抜き、カタール本大会でベスト16に駒を進めている。ドイツ、スペインに対する大番狂わせは語り草。今回の予選突破もほぼ間違いない。

 そういう意味では岡田武史監督や西野朗監督も「名将」だろう。どちらもJリーグでタイトルを獲得し、日本代表をW杯ベスト16に導いた。その功績は傑出しており、彼らは飛びきりのボスだった。

 ただ、この3人は世界的にも「名将」と言えるのか。その答えは、Jリーグで日本人監督がなかなか台頭しない現実とも交錯するかもしれない―――。

 今シーズンのJリーグ序盤、評判を高めているのは、柏レイソルのスペイン人監督リカルド・ロドリゲスである。選手たちが、いつ、どこにいて、何をすべきか、その原則が通底されている。判断に迷いが少なくなった。それだけで主導権を握り、崩れかけても立て直すことができている。それを落とし込んだ監督の手腕が称賛されているのだ。

現在4位につけている柏レイソルのリカルド・ロドリゲス監督 photo by Yamazoe Toshio現在4位につけている柏レイソルのリカルド・ロドリゲス監督 photo by Yamazoe Toshioこの記事に関連する写真を見る ただ、裏を返せば、昨シーズンまで率いた井原正巳監督が「凡庸だった」と言わざるを得ない。選手たちは最後まで、やるべきことに迷っていた。それは指揮官が「ハードワーク」や「気持ち」という抽象的な言葉でしか説明ができなかったからだろう。選手の動きに一貫性がなく、どのエリアが危険で、どのエリアがチャンスになるか、徹底がされなかった。

 実際、J1の日本人監督で、瞠目に値するサッカーを展開する人材はなかなか見当たらない。ほとんど50代以上で、見知った顔ばかりだ。王者・ヴィッセル神戸の吉田孝行監督は若手だが、Jリーグでしばしば起こる「有力選手主導で強い」という現象だろう。神戸はミゲル・アンヘル・ロティーナ監督の解任前後から、主力選手主導でアンドレス・イニエスタ中心のサッカーと決別したことが結果につながった。

1 / 3

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

フォトギャラリーを見る

キーワード

このページのトップに戻る