元ワールドカップ主審・西村雄一が賞賛されたブラジル代表MFへの一発レッドカード「あれを見逃していたら...」 (4ページ目)
【監督だって譲れない時もある】
ファウルやその繰り返しによる判定で、監督が声を荒げる場面は少なくない。激高する監督もいる。
「監督がいつも紳士でなければならない、と僕は思っていません。チームを鼓舞するための振る舞いもあるでしょうし、外から見ていてどうしても納得いかないとか、譲れないという時もあるでしょう。
その思いをしっかり受け止めるようにしています。それをせずに『黙って!』としたら、監督は気になったシーンではなく『主審のその態度が気にいらない』ということになりかねないので」
サッカーでは、同じプレーは二度と起こらない。だからこそ、過去の情報に頼らず、先入観に走ることなく、一つひとつ判定を創っていく。
「勝敗に関係なく、選手に『今日はやりきった』と、観客の方々には『また観に行きたい』と、試合後に思ってもらえるか。皆さんが結果を受け入れて次の試合へと向かっていくなかで、レフェリーの存在が記憶に残っていなければ、とりあえずの役割は果たすことができたのかな、と思いますね」
選手、監督との絶え間ないやり取りは、レフェリーとしての西村を成長させた。印象深い選手を聞くと、ほとんど間を置かずに、あの元日本代表DFを挙げた。
(つづく)
◆西村雄一・後編>>「闘莉王、大久保嘉人、ネイマールとの思い出」
【profile】
西村雄一(にしむら・ゆういち)
1972年4月17日生まれ、東京都出身。サラリーマン生活を送りながら1999年に1級審判員となり、2004年から2014年まで国際審判員を務める。ワールドカップは2010年南アフリカ大会と2014年ブラジル大会で笛を吹く。J1、J2、J3、リーグカップ、天皇杯で計688試合を主審として担当し、Jリーグ最優秀主審賞は11度受賞。2024年12月にトップリーグ担当からの勇退を発表し、2025年からJFA審判マネジャーに就任した。
著者プロフィール
戸塚 啓 (とつか・けい)
スポーツライター。 1968年生まれ、神奈川県出身。法政大学法学部卒。サッカー専
門誌記者を経てフリーに。サッカーワールドカップは1998年より 7大会連続取材。サッカーJ2大宮アルディージャオフィシャルライター、ラグビーリーグ ワン東芝ブレイブルーパス東京契約ライター。近著に『JFAの挑戦-コロナと戦う日本 サッカー』(小学館)
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