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元ワールドカップ主審・西村雄一が賞賛されたブラジル代表MFへの一発レッドカード「あれを見逃していたら...」 (3ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【ジャッジするのは仕事の半分】

「あの場面は、ロブレン選手のホールディング、ノーファウル、フレッジ選手のシミュレーション......の三択です。ロブレン選手の左手がフレッジ選手の左肩にかかっているのは、映像に残っています。シミュレーションはまったく接触がないのにあったように装うものですから、ここでその判定はエラーになります。

 さらに言うと、プッシングやキッキングなどはどれくらいの程度で行なわれたのかという判断が必要ですが、ホールディングはその行為があって、どのように影響したかの判断です。あの状況でフレッジ選手が耐えてプレーを続ける選択肢もあったのでしょうが、ホールディングがあったのも事実であり、かつその結果フレッジ選手が倒れてしまったので、ファウルと決定しました」

 レフェリーの仕事は「マネジメント」と西村は言う。

「ファウルなのかどうかをジャッジするのは、仕事の半分ほどでしょう。そのジャッジを受けて当該選手や両チームの選手が納得し、次のプレーに向かえるようにマネジメントすることが大切です」

 目の前で起こる一期一会のプレーに感動しつつ、西村は一つひとつのプレーに眼を凝らす。そのなかで、選手たちとコミュニケーションを図っていった。

「厳しいプレーをしてしまった人に『なぜ、そういうことするんですか』と問いただしても、『仕方がないでしょう』となるだけです。そこで、『ここは止めるしかなかったですよね』と言うと、『そうなんです、すみませんでした』となる。選手は自分のプレーを理解してもらったことで、自分の行動を変えることができます』

 監督とも、コミュニケーションを取る。無線機を使って第4の審判員と協力しながら、スムーズな試合進行を実現していく。

「監督はピッチの外から、主審は中から見ているので、見方が真逆になることがあります。その違いで折り合いがつかない場面では、『内側からだとこんなふうに見えました』と、監督に投げかけてみたりします。もしくは4th(第4の審判員)に中からどう見えたのかを無線機で伝え、監督に届けてもらっています」

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