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Jリーグに欧州のようなビッグクラブが生まれないのはなぜか? 自由競争はあるのか

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

連載第26回
杉山茂樹の「看過できない」

 発足以来、今年で33年目のシーズンを迎えるJリーグは。1部から3部リーグまで60チームが存在するまでに発展を遂げた。順調に肥大化している。それぞれのホームスタジアムはそれなりに盛況だ。想像以上に多くの観衆を集めている。しかし、それはあくまでも地元周辺に限った、局地的で限定的な盛り上がりだ。日本全土に話題を振りまき、席巻しているようには見えない。

 ファンは応援する地元クラブには大きな関心を寄せても、他クラブには関心を示さない。応援するクラブの順位には敏感だが、優勝争いには興味を示さない傾向が強い。欧州のファンとの違いだ。

 Jリーグに読売巨人軍はいらない――Jリーグ発足にあたり、当時の川淵三郎チェアマンはそう口にした。Jリーグのあるべき姿、理念のひとつとして、気持ちいいぐらいの口ぶりでハッキリと言ってのけた。プロ野球との違いはそこにあり、と価値観の違いを声高に宣言。それをそのまま宣伝文句とした。

 そして放映権料を均等分配するなど、何事においても横並びの施策を打った。競争原理を働かせる前に、落伍者を出さないことに主眼を置いた。セパ併せて12チームという少数精鋭の集団で構成するプロ野球に対し、Jリーグは地元との一体化を図ろうと、地域に根ざしたクラブを全国各地にできるだけ増やそうとした。クラブ名に地域名を添えさせる一方で、企業名を排除する制限を加えた。自由競争の原理が働いていたとは言い難い。何よりJリーグという集団の発展を重要視した。

 川淵さんが目指したのは欧州のようなクラブ社会の構築だった。しかし、欧州を訪れれば、読売巨人軍的なチーム、すなわちビッグクラブ、名門クラブが各国リーグに点在することは一目瞭然だった。

 レアル・マドリードはその極めつけだろう。チャンピオンズリーグ(CL)優勝15回。ミラン(7回)、リバプール、バイエルン(6回)、バルセロナ(5回)、アヤックス(4回)、インテル、マンチェスター・ユナイテッド(3回)ら、他の追随を許さぬ、絶対王者の地位を築いている。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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