Jリーグに欧州のようなビッグクラブが生まれないのはなぜか? 自由競争はあるのか (3ページ目)
【Jリーグが日本のサッカーを支える番だが...】
Jリーグにはそういう意味で夢がない。Jリーグに加盟する60チームのなかで、J1優勝を真剣に狙おうとしているチームはどれほどあるだろうか。モチベーションはけっして高くないのではないか。
「読売巨人軍は存在しないが、圧倒的な人気チームとして日本代表がある」とする声があった。だが、この考え方は欧州的ではなかった。クラブチーム中心の欧州に対して、日本のサッカー界は日本代表を軸に産業が回っていた。ビッグクラブはそういう意味で、特に必要ではなかった。
つまり日本代表が"間"を持たせてくれる存在だった。Jリーグに欠ける要素を補う役割を果たしていた。日本代表は順調に右肩上がりを示し、W杯本大会でもベスト16以上を狙う立ち位置にまで上げてきた。しかしいま、関心は一時期より大幅に薄れている。アジア勢以外と戦うことが容易ではなくなった環境的な問題に直面し、話題を失いつつある。
クラブサッカーの頑張りどころ。いまこそJリーグが日本サッカーを支える番だと見るが、パワー不足は否めない。
首都東京にこれだという人気チームが存在しないこと。いいスタジアムがまだまだ少ないこと。浦和レッズが敵役になれていないこと。第三者が見て、いいサッカーをするチーム、いいサッカーをする監督が少ないこと。これに選手の海外流出が拍車を掛けている。
日本代表を上回るくらいの偉大なクラブチームが出現しないと、日本サッカーの将来は危ない。このままでは局地的な盛り上がりで終わってしまう可能性がある。心配だ。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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