検索

Jリーグに欧州のようなビッグクラブが生まれないのはなぜか? 自由競争はあるのか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【Jリーグは頂点が低いピラミッド】

 ミラン以下のチームにしても、それぞれの各国リーグに戻れば強者として通る。イングランド勢は、時代によって微妙な入れ替わりがあるが、スペインではレアル・マドリードにバルセロナが抗うという構図が伝統として築かれている。軸となるチームは各国リーグにも欧州クラブ戦線にも存在する。

 ファンが最も関心を寄せるのは日常的に応援している地元クラブ。だが、同時に優勝争いにも関心を寄せる。CLなど欧州のクラブマッチにも同様に関心を示す。

 たとえば、あるナポリのファンはこう言っていた。

「一番気になるのは当然、ナポリの結果だけれど、サッカーをじっくり見るならバルセロナかレアル・マドリードですね。逆に憎たらしいのはミラン勢。私みたいなスタンスのファンは普通です」

昨シーズン最終節、ヴィッセル神戸の優勝を喜ぶファンたち photo by Ushijima Hisato昨シーズン最終節、ヴィッセル神戸の優勝を喜ぶファンたち photo by Ushijima Hisato Jリーグには圧倒的な強者が存在しない。王道を行くチームもいなければ、敵役となるチームもいない。アジアチャンピオンズリーグへの広がりもない。欧州サッカーファンはそれなりにいるが、Jリーグの各クラブのファン層とはちょっと違う。欧州で味わうような活気が日本のサッカー界には決定的に欠けている。

 鹿島アントラーズ8回、横浜F・マリノス5回、川崎フロンターレ4回。ジュビロ磐田、サンフレッチェ広島3回......。以上はJ1リーグ過去32シーズンにおける優勝回数ランキングである。だが、鹿島はもはや常勝軍団ではない。2016年のシーズン優勝後、8シーズンも優勝から遠ざかっている。横浜FM、川崎フロンターレが"2大チーム"と言われた期間も数年止まりだった。他のチームは一時代を形成するまでには至っていない。J1からJ3まで全60チームで形成されるピラミッドは、ヒエラルキーが存在しないため、頂点が低い。

 明確なトップクラブが存在しない理由はわかりやすい。Jリーグで優勝するメリットが少ないからだ。賞金額、分配金を合わせても5億円強。その先に控えるアジアチャンピオンズリーグの賞金額も、今季から大幅に増額されたとはいえ17億円強に留まる。国内リーグの先にCLという大舞台が控える欧州とは違う。今季、新装なったCLの優勝チームが手にする賞金をはじめとする収入は、総額で最大約150億円に達すると言われる。スケールはACLの十倍近い。

2 / 3

キーワード

このページのトップに戻る