【高校サッカー】決勝の激闘のなかで感じた画期的な変化...「先発メンバーの入れ替え」はスタンダードになるか (2ページ目)
負ければこの大会が終わるどころか、高校3年間の活動に終止符が打たれてしまうとあっては、仕方がない面もあるとはいえ、その分、選手への負担は大きくなる。まして近年は、高校サッカーにおいてもプレー強度の高さが要求されるようになったことを考えると、なおさらだ。
だからこそ、今大会の決勝が画期的だったと感じるのである。
しかも、優勝した前橋育英が先発メンバーを入れ替えたのは、決勝だけではない。1回戦からの6試合を振り返ると、3回戦から準決勝までの3試合を同じ先発メンバーで戦っているが、それ以外は試合ごとに入れ替わっていることがわかる。
小さな体と鋭いドリブルで今大会のアイドルとなった白井誠也(2年)にしても、先発出場は2回戦の1試合のみ。選手層の厚さがあるからこそ、これほどの選手でもベンチに置くことができ、先発メンバーを入れ替えることも可能になるのだろう。
高校年代でもリーグ戦が定着し、"負けても次がある試合"が増加。多くの選手がプレーしやすくなった環境も、選手起用の幅を広げているに違いない。
そんな前橋育英以上に先発メンバーが頻繁に入れ替わっていたのが、準優勝の流通経済大柏である。
流通経済大柏は今大会の全5試合(大会初戦が2回戦)で、必ず先発メンバーが入れ替わり、すべての試合に先発出場した選手は7人だけ。合計15人の選手が、1試合以上に先発出場していた。過去の大会をさかのぼっても、こうした選手起用で決勝まで勝ち上がってきた高校というのは、ほとんど例がないのではないだろうか。
もちろん、全国屈指の強豪校ゆえの分厚い選手層があるから可能なことかもしれない。
実際、前橋育英との決勝を振り返っても、途中出場でピッチに立った和田哲平(3年)がわずかな出場時間で負傷交代を余儀なくされたにもかかわらず、代わって入った安藤晃希(2年)が、キレのいいドリブル突破を何度も見せていた。そもそも今大会3ゴールの和田を決勝でベンチに置くこと自体が簡単ではない決断のはずだが、その後の思わぬアクシデントもまた、図らずも選手層の厚さを見せつける格好になった。
だが、そこには同時に、選手のコンディションに対する配慮もあったのではないだろうか。
今大会の流通経済大柏は、湘南ベルマーレ入りが内定している松本果成(3年)を擁していたが、大会前に体調を崩したことで、準々決勝まではすべて途中出場。準決勝で初めての先発出場となったものの、そこでヒザを痛め、決勝では控えメンバーからも外れている。
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