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サンフレッチェ広島、来季につながる堂々の準優勝 佐々木翔も「胸を張っていい」とキッパリ (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 とはいえ、内容的に見れば、今季の広島がJ1で最も優れたチームのひとつであったことに疑いはない。

 チーム全体でインテンシティの高い攻守を繰り返し、多くのチャンスを作り出す。今季J1最多となる総得点72は、その証明だろう。

 敗れた試合でも、完全に主導権を握り、攻勢に進めていた試合が少なくなかった。勝負弱さや経験不足、あるいは決定力不足に敗因を求めるならそのとおりだろうが、裏を返せば、それらは自分たちの戦い方が確立され、優勢に試合を進めることができていたからこそ浮き彫りになった課題でもある。

 冒頭に記したスキッベ監督の言葉も、決して強がりや慰めには聞こえず、極めて妥当な意見だと腑に落ちる。

 結果に一喜一憂することなく、自身の仕事に集中する指揮官が就任して3年目の今季、チームのベースは確実に構築されてきたと言えるだろう。しかも、ここ3シーズンのJ1順位は3位、3位、2位。およそ落胆するような成績ではない。

 加えて、今季主力を務めた顔ぶれには、まだまだ成長途上にある選手がそろっている。

 ともに24歳の中野就斗と東俊希は、リーグ戦全38試合に出場。広島に数多くのチャンスをもたらした両翼は、今季を通じて一段階ステップアップした印象を受ける。

 また、東京五輪世代の26歳、松本泰志もキャリアハイの36試合に出場。本来のボランチだけでなく、シャドーの位置でもパスセンスを生かすなど、プレーの幅を大きく広げた。

 そして、指揮官が「(将来的に)自分たちの"顔"になる選手」と評するのは、中島洋太朗である。

 18歳の高校3年生ながらすでにプロ契約を結んでいる俊英は、リーグ戦12試合に出場し、限られた出場時間のなかでもキラリと光る才能の片鱗を示した。

 今季を最後に、青山敏弘、柏好文と、優勝の味を知るベテランがチームを去ることにはなかったが、来季への伸びしろという点で言えば、その期待値は優勝した神戸をも上回ると言っていいだろう。

「もちろん優勝できなかったのは非常に悔しい」

 そう言って目を潤ませるキャプテンの佐々木翔も、しかし、「2位ということ自体は胸を張っていいところだと思う」とキッパリ。来季へ向けては、「自分たちのサッカーにより磨きをかけてさらに強くなっていくところ。ここ3年間磨き続けてきて、優勝争いができるとこまできていると思うので、さらに磨きをかけること」が大事だと語る。

 最後の最後で優勝は逃した。クラブのレジェンド、青山の引退に花を添えることはできなかった。

 だが、昨季の3位からひとつ順位を上げた"準優勝"という成績は、決して広島の評価を落とすものにはならないはずだ。

 およそ2カ月後に始まる来季、彼らを優勝候補に推す声は今季以上の高まりを見せるに違いない。

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