ヴィッセル神戸・武藤嘉紀の涙 J1優勝の立役者はクラブに残るのか...32歳の決断はいかに (3ページ目)
【ヴィッセル神戸での幸せな3年半】
ヴィッセルへの思いはある。2021年夏の加入にあたって、クラブ側が示した熱意は胸に刻まれている。
「その時の監督、チームが僕の力を必要としてくれて、ヴィッセルを選んで、その結果としてこれだけのパワーを発揮できた。信頼してくださって、自分の力を必要としてくださった。それが僕をここまで駆り立てたので、そういったのはものをしっかり大事にしたい。ここに来た理由はタイトルもたらすことで、それについては何とか、少しは貢献できたかなと」
シーズン途中の加入となった2021年は、14試合出場で5得点7アシストを記録した。2022年は6得点1アシストにとどまったが、2023年は10得点10アシストと数字を残し、クラブ史上初のJ1リーグ優勝に貢献した。自身はベストイレブンに選出された。今シーズンはMVPの有力な候補とも言われる。
「自分の力を必要としてくれるところでやる。それに尽きるかな、と。ヴィッセルでの3年半は悪い時もありましたけど、こんなに幸せな3年半も考えてみればなかった。これまではあまり今後について考えられなかったのですが、すべてが終わったので、ここで一度落ち着いて考えていきたいです」
2025年のJ1リーグは、2月第2週に開幕する。プレシーズンの準備を6週間とすると、1月6日から10日あたりが始動のタイミングになるだろう。
神戸は開幕に先駆けてACLが組まれており、来シーズンも過密日程が待ち受ける。攻撃のキーパーソンにしてチームリーダーのひとりでもある武藤は、欠くことのできない選手だ。
試合中に、試合後にこぼした涙は、果たしてどんな意味を持っていたのか。タイトルをもたらすという使命を果たしたことで、感情を揺さぶられたのか。あるいは、何かのシグナルだったのか──。
円熟期にある32歳の決断に、注目しないわけにはいかない。
著者プロフィール
戸塚 啓 (とつか・けい)
スポーツライター。 1968年生まれ、神奈川県出身。法政大学法学部卒。サッカー専
門誌記者を経てフリーに。サッカーワールドカップは1998年より 7大会連続取材。サッカーJ2大宮アルディージャオフィシャルライター、ラグビーリーグ ワン東芝ブレイブルーパス東京契約ライター。近著に『JFAの挑戦-コロナと戦う日本 サッカー』(小学館)
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