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ヴィッセル神戸・武藤嘉紀の涙 J1優勝の立役者はクラブに残るのか...32歳の決断はいかに (2ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【あばら骨を折ってもピッチに立ち続けた】

 今シーズンはチームトップにしてキャリアハイに並ぶ13ゴールをマークした。アシストも「7」を数える。大迫、宮代、武藤の3人が並び、佐々木らも加わることで「相手のマークが分散されて、みんなが(ゴールが)取れている」(吉田孝行監督)ところはあっただろう。

 そのうえで言えば、武藤がシーズンを通して高いパフォーマンスを保ったのは間違いない。4月の湘南戦で肋骨を骨折したが、翌節以降も欠場することなくピッチに立ち続けた。37試合出場はGK前川、CB山川哲史と武藤の3人だけで、プレータイムはチームで4番目に多い。

「あばら骨も折りましたし、大変な1年でした。痛みを抱えてやった試合も多々あったんですけど、とにかく気合で乗りきった1年だった。(天皇杯との)2冠プラス連覇ができて、すべてが報われたかなと思います」

 達成感を口にするが、表情に満足感はない。

「今がベストじゃなくて、また来年もさらに成長できるように。この歳になったら、トレーニングをやめてしまったら、それでもう衰退が進んでしまう。とにかく自分にプレッシャーをかけて、日々トレーニング続けたい」

 自らと厳しく向き合うが、連覇を決めた夜だけは自分を解放した。試合後に神戸市内のホテルで催された祝勝会では、チームメイトとビールかけを楽しんだ。

「1年間、ほぼお酒も飲まなかったです。今日だけはみんなで飲んで、ぐっすり眠りたいと思ってます」

 リーグ戦が全日程を終えた9日以降も、武藤はメディアの注目を集める。神戸との契約が、今シーズンまでとなっているからだ。

 クラブ側からは条件提示を受けているが、浦和レッズが獲得に乗り出すとの報道もある。湘南戦後に去就について問われると、武藤は現時点で話せることを答えていく。

「ここまではサッカーだけに集中するってことで、次のシーズンの話は進めなかったんですけど、ここからどうなるかは正直、自分でもまだわかっていないところがある。ヴィッセルが自分に対してどう思ってくれているのか、そういったのも全部含めて、何が自分にとってベストなのかを考えて意思決定をしたい」

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