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青山敏弘は引退セレモニーで「まだ終わっていない」と言った 広島に21年間捧げたバンディエラの確信 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei

【その先にみんなと喜ぶ光景が見えている】

 長いセレモニーを終えても、青山は最後までスタジアムを回り、サポーターに感謝の想いを伝え続けていた。ようやくミックスゾーンにやってきたのは、試合終了からすでに2時間近くが経っていた。

 着替えもせず、ユニホーム姿で現われた青山は、懇意の記者にこう漏らした。

「まだ、足りないんですよね」

 まさか、あれだけ長く話したのに、まだ話したりないのだろうか。

「いや、まだ何かあると思うんですよね。まだ終わっていないので」

 その「何か」を聞くのは、愚問だろう。

 実はこの札幌戦が、青山の現役ラストマッチとはならなかった。ミヒャエル・スキッベ監督は5日にホームで行なわれるACL2で青山と、今季かぎりで契約満了となった柏好文のスタメン起用を明言。さらにその3日後にはアウェーでガンバ大阪とのリーグ戦・最終節が待ち受ける。

 札幌戦の勝利で広島は首位のヴィッセル神戸に勝ち点1差に迫った。ガンバに勝っても、神戸が勝てば優勝できないが、勝つことで奇跡が起きるかもしれない。

「(80分のシュートが)入らなかったってことは、まだ続きがあると思っていて。今日は最高の雰囲気でできましたけど、まだ優勝争いは続いている。そこにまだ自分も携わらせていただいているのは、本当に幸せなことだと思います。

 その続きに自分が出て、活躍するというイメージが僕にはある。今日が最後じゃなくて、その先にみんなと喜ぶ光景が見えている。きっとできると思います、僕なら」

 その言葉は、どこか確信に満ちていた。21年間、全身全霊で広島のために戦ってきたこの男が言うのなら、本当にそうなるのかもしれない。

著者プロフィール

  • 原山裕平

    原山裕平 (はらやま・ゆうへい)

    スポーツライター。1976年生まれ、静岡県出身。2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。

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