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青山敏弘は引退セレモニーで「まだ終わっていない」と言った 広島に21年間捧げたバンディエラの確信 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei

【2007年から背負ってきた6番を継承】

 立ち上がりから前への圧力を強め、敵陣で試合を進めると、開始8分には加藤陸次樹が早々に先制ゴールをマーク。一度は同点とされるも、前半終了間際に東俊希の直接FKで勝ち越し、後半に入ってトルガイ・アルスラン、ソティリウと助っ人コンビが続いた。残り10分あまりでリードを3点に広げ、はなむけの舞台装置は整えられたのだった。

 その想いに応えるかの如く、青山もあふれる情熱をピッチ上で表現した。万雷の拍手で迎えられ、佐々木翔から手渡されたキャプテンマークを左腕に巻くと、FWよろしく果敢にゴール前に飛び込み、追加点を狙い続けた。

 中盤で長短のパスを操る司令塔のイメージが強い青山だが、デビュー当初は所狭しとピッチを駆け、攻守両面で躍動するボックス・トゥ・ボックスだった。10分と少しのプレー時間だったが、80分には角度のない位置からあわやというシュートも放っている。リスクを恐れぬスタイルで、ゴールに迫った若かりし頃の姿を想起させた。

 試合後のセレモニーも、誠実にキャリアを築いてきた青山らしいものだった。15分近くに及んだスピーチは、そのすべてに感謝の想いが綴られていた。クラブの会長に、地元の岡山県に、プロ入り後に師事した監督たちに、先輩たちに、同級生に、後輩たちに、両親に、兄弟に、妻に、子どもたちに、そして愛すべきサポーターたちに......。

 スピーチのなかでは、歴史をつなぐシーンもあった。2007年から背負ってきた6番を川辺駿に継承したのだ。

「本当に初めて、6番を着けたいと言ってくれた選手。チームには優勝したら着けさせてくれと言っていたらしいんですけど、今回、優勝する前に渡すから優勝してくれと。そういう想いで僕は託したし、それを託せる選手だと思っています。

 それは僕だけじゃなく、クラブもそうだし、ファン・サポーターも同じ想いだと思う。僕自身もうれしいし、これで彼がどうなるか、期待して見ていきたいです」

 サプライズの継承式に、川辺の目からは涙が止まらなくなっていた。

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