浦和レッズDFホイブラーテンが語るJリーグとサポーター 鳥肌が立った瞬間とは? (3ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi

【あの光景を思い出すだけで鳥肌が立つ】

 浦和での1年目の2023年シーズン、チームはホイブラーテンが加入する前に、2022年シーズンのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)で決勝へ駒を進めていた。カタールW杯が2022年の11月から12月に開催されたことで、ACL決勝は2023年の4月下旬と5月上旬に持ち越されていた。それはちょうど、ホイブラーテンがチームにすっかり適応していた頃で、浦和はJ1リーグで開幕2連敗から立ち直り、7試合で5勝2分と負けなしを維持していた。

「サウジアラビアでの第1戦では、スタジアムに着いた僕らのバスを相手サポーターが止め、激しくヤジを飛ばしてきた。困難な試合になると思ったけど、本当にそのとおりになった。先制されて苦しくなったが、後半に追いつき、ホームで決着をつけられることになって自信が湧いてきたよ。なにしろうちの本拠地には、多くの熱狂的なサポーターがついているのだから」

 そこまで語ると、ホイブラーテンは自らの腕をさすって、少しの間、遠くを見るような目をした。

「あの光景を思い出すだけで、鳥肌が立つんだ。満員の埼玉スタジアムに響く大声援と、描かれたコレオグラフィー。本当にファンタスティックなサポーターだよ。僕が知る限り、最高のファンだ。彼や彼女たちは、僕ら選手たちに大きなエネルギーを与えてくれる。あの決勝の第2戦も、ファンがいなければ勝てなかっただろう。試合終了の笛が鳴り、優勝が決まった時は感無量だったよ。自分のキャリアで最大のタイトルであり、最高の瞬間だった」

 入団から半年も経たずにアジアタイトルを手にしたホイブラーテン。いいスタートを切れなかった国内リーグでも存在感を高めていき、1年目は4位で終えた。今季は再びのACLを目指して再スタートしたが、夏には相棒が新天地を求めてクラブを去っていった。

後編「ホイブラーテンが語る日本での生活」へつづく>>

マリウス・ホイブラーテン 
Marius Hoibraten/1995年1月23日生まれ。ノルウェー・オスロ出身。2011年、リールストロムで16歳でトップチームデビュー。ストレンメン、ストレームスゴトセト、サンデフィヨルド・フォトバルを経て、2020年からはボーデ/グリムトでプレー。国内リーグ2連覇に貢献した。U-17、U-19、U-21と年代別のノルウェー代表の経験がある。2023年より浦和レッズでプレー。2023シーズンはJリーグベストイレブンに選ばれた。

著者プロフィール

  • 井川洋一

    井川洋一 (いがわ・よういち)

    スポーツライター、編集者、翻訳者、コーディネーター。学生時代にニューヨークで写真を学び、現地の情報誌でキャリアを歩み始める。帰国後、『サッカーダイジェスト』で記者兼編集者を務める間に英『PA Sport』通信から誘われ、香港へ転職。『UEFA.com日本語版』の編集責任者を7年間務めた。欧州や南米、アフリカなど世界中に幅広いネットワークを持ち、現在は様々なメディアに寄稿する。1978年、福岡県生まれ。

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