ベテラン藤春廣輝の気づきとマインドの変化「キャリアを積むうちにチームのなかでの自分を考えるようになった」 (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

 J1での優勝争いや残留争い、J2降格、国内"三冠"といったさまざまな経験をしながらキャリアを積み上げきたなかで目にしてきたこと、人との出会いのすべてが自身の糧になっていた。

「若いときはチームのことを考える余裕もなかったし、毎日がただただ必死で(頭にあったのは)『自分が活躍せなアカン』ってことばっかりやったけど、キャリアを積むうちにチームのなかでの自分を考えるようになった。

『チームがうまく回るには』とか、『チームとして結果を残すには』ってことを考えるようになったのも、同じチームに長い間、在籍して、その移り変わりを体感しながら、勝つことの大変さ、強くなる難しさを学べたからやと思う」

【自分が加わった意味を何か残したい】

 そして、その経験は今、琉球でも確かに活かされている。先に記したピッチ上での「フォア・ザ・チーム」を意識したプレーはもちろん、ピッチ外でも相変わらず"兄貴分"としての立ち振る舞いは多く、この約5カ月の間にはすでに全選手と食事に出掛けたと聞く。オフになると、体のケアを兼ねて一緒に温泉に入ることも多いそうだ。

「こっちに来てから、既存の選手にいろんな話を聞いて、ベテランと若手をしっかり融合させる必要性を感じたし、自分がその助けになればいいなと。だから、同じ選手とばかり行動をともにするのではなく、いろんな選手と食事に行って話をするようにしています。

 そういうふうにチームのために何ができるかを考えて、その役割を実行に移すことが結果につながる部分もあるはずやし、せっかく琉球に来た以上は、自分が加わった意味を何かしら残したいなと。もちろん僕が与えるばかりではなく、助けてもらっていることも多いんですけど」

 そうした陰で、彼が軸に据える"走れる体"づくりにも余念がない。全試合フル出場にも「疲労はまったく感じていない」と話す藤春だが、一方でキャリアを積めば、疲労回復が遅くなっていることも、それがケガを誘発しかねないことも、自覚している。だからこそ、プライベートの時間はこれまで以上に体のケアに時間を割くことも増えた。

「ピッチに立つ限り、環境が整っていないことは言い訳にならない。だからこそ、体に必要だと思う準備やケアは徹底しているし、食事も大阪にいるときとは違って、ほとんど外食になったとはいえ、いつ、何を食べればいいのかはわかっているつもりなので。必要な栄養を、必要なタイミングで体に入れることは心掛けています。

 マストなのは、試合前の鯖と、試合後の鰻か豚肉。あとは、沖縄は美味しいものが多いから、食べすぎないように気をつけるくらいかな」

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