川崎フロンターレ、戦力拡充による「上昇度」は? 鬼木達監督のカリスマは蘇るか (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【弱点は最終ラインの守備】

 昨季の中心選手で、シーズン前にMSLのロサンゼルス・ギャラクシーに移籍した右サイドバック(SB)山根視来の後を継ぐ佐々木旭もカギを握る選手だ。

 過去2シーズン、左SBでプレーした選手を、右にコンバートしたわけだが、それ自体は問題ないと見た。注目すべきは、その前方で構える37歳の右ウイング、家長昭博との関係だ。その突破力はさすがに落ちている。縦に抜ける回数は年々減少。SBのサポートなしには川崎の右は活性化しない。

 逆に相手ボールに転じた瞬間、短所になりかねない危険も孕む。右ウイングに家長以外の選択肢が特段ないことも輪をかける。佐々木には山根以上の貢献が望まれる。

 その佐々木と、今季セレッソ大阪に移籍した登里享平が争った左SBには、日本代表にも招集された三浦が入る。縦への直進的な推進力、パンチ力に富んだ、従来の川崎にはなかった魅力を備えた選手だ。両SBが活躍するチームが勝つとは、欧州に浸透している考え方だが、ここが決まると成績は安定する。

 中盤はガンバ大阪から加入した山本が即戦力として期待される。ひと言でいえばパスセンスに富む好選手。展開に滑らかさは増すだろう。新加入のゼ・ヒカルドは未知数だ。4-3-3を敷く場合、アンカーの選択肢はこのブラジル人選手と橘田健人の2人になる。好選手だが、アンカーに不可欠とされるボール奪取能力、空中戦を含む総合的な対人強度に乏しい橘田と、長所短所をカバーし合うことができるか。昨季までプレーしたシミッチのレベルを超える活躍ができないと苦しい。

 弱点に映るのは、シーズンを重ねるごとに点を奪われやすくなっている、アンカーを含めた最終ラインの守りだ。谷口の穴は埋まっていない。合計スコア5-6となった山東泰山戦の派手な負けっぷりを見せられると、あらためて心配になる。元日本代表、丸山祐市の獲得でこと足りるようには見えない。

 昨季まで堅守自慢だったチームに、チアゴ・サンタナという大砲が加わった浦和レッズのほうが上に行くのではないかと見る理由だ。優勝争いに絡む力はあるが、絶対的な力はない。固さ、ソリッドさをどう発揮するか。そして繰り返すが、8年目を迎える鬼木監督にカリスマ性は蘇るのかにも目を凝らしたい。

プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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