V・ファーレン長崎はFIFAに提訴 監督の「二重契約問題」にブラジル人記者が迫る

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 所属していたV・ファーレン長崎から承諾もなく移籍したと言われているファビオ・カリーレ監督が、1月20日、サンパウロ州リーグの第1節でサントスの監督として正式にデビューを果たした。結果はボタフォゴ(本田圭佑のいたリオのボタフォゴとは別物)に2-1で白星スタートとなった。

 しかし一方で前日の19日、長崎はサントスとカリーレ監督及び3人のコーチをFIFAに提訴している。この事件はブラジルでも大きく報じられ、注視されている。事態が一向に解決しないのは、当事者たちそれぞれがまったく別なストーリーを見ているからだろう。

2022年6月からV・ファーレン長崎を率いてきたファビオ・カリーレ監督photo by Naoki Morita/AFLO SPORT2022年6月からV・ファーレン長崎を率いてきたファビオ・カリーレ監督photo by Naoki Morita/AFLO SPORTこの記事に関連する写真を見る まずは長崎の主張を見てみよう。

 チームの公式サイトによると、彼らは10月にカリーレ監督に契約延長を打診し、11月末に契約を締結している。ところが12月19日に突如監督からサントスへの移籍の意向を受け、翌20日にサントスは正式にカリーレが監督になったことを発表した。長崎は何の連絡も受けておらず、まさに寝耳に水だったようだ。

 その後、再三説明を求めても、オファーレターさえ届かず、1月12日になって初めてサントスと話し合いの場を持つことができたが、ブラジル側の主張は「サントスへの移籍は有効」というもの、もちろん長崎はそれを受け入れない。ただ、この話し合いの場では違約金を払う用意があることを匂わせたが、翌日にはその話し合いとはまるで違うことを、サントスが発表。長崎は不信感を募らせていき、ついにはFIFAへの提訴に至った。ざっとこんな経緯だ。

 一方、サントスは当初、「長崎と監督の代理人の間ではすでに話がついていると聞いている。交渉の最初から違約金の条項は盛り込まれていない」とし、これはあくまでも長崎と監督の問題であって、サントスと長崎の問題ではないというスタンスをとっていた。そのため、サントスがチームの代表を話し合いの席に送ったのは、かなり後になってからだった。しかも「私たちは長崎と監督の関係を調停するため、善意で会議に臨んだ」と、述べている。あくまでも自分たちは問題とは無関係の、善意の第三者だという体を装っていた。

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