サッカーマニア平畠啓史の2023年J2総括 上位で発見した意外な共通点と各チームの「すごかった」ところ (6ページ目)

  • 池田タツ●取材・文 text by Ikeda Tatsu

【降格しても今季のいいところは頭に残しておきたい】

 大宮アルディージャは2022年が19位で、ガンガン補強したわけでもない感じで2023年に入った。その状態でシーズンに入ったらどうなるかと言えば、現状維持かちょっと上がるかぐらいになるのかなと思いますよね。

 でも見ている僕らって「大宮って予算あるし」とか「いや、大宮やで。大丈夫やろ」って思うじゃないですか。応援されていた方の中でもそう思っていた人もいたんじゃないでしょうか。でも冷静に考えると19位のチームがあまり補強をせずにシーズン入ったら、上積みはあんまりないですよね。

「あの大宮が降格した!」ってネットとかで書かれてしまうんですが、でもその前から兆候は出ていたという。僕ら見る側も大宮だからとボヤッとしてしまったかなと。

 シーズン前に「今年の大宮は危ないですよ」と言っていた人が、すごく冷静にサッカーを見られていた人だと思います。大宮の予算規模やスポンサーの大きさみたいなところに目が行って、僕らはちゃんと直視できていなかったかもしれない。

 でも、あのメンバーで降格になるのかという思いもあります。まったく同じメンバーで2023シーズンをもう一回戦ったとして、大宮が必ず落ちるかといったらそうではないと思うんですよ。そこは難しい問題なんですけど。よそのクラブと比べて、戦力が落ちているかといったらそうではないですからね。

 J3に落ちたのはもちろん残念なことですけど、ただそれだけのシーズンではないと思うんですよ。市原吏音選手みたいなのが入ってきたりとか、「カイケってやばくね!?」とか、岡庭愁人選手も頑張っていたし、袴田裕太郎選手のヘディングシュートに感動したとか。

 そういうのは、絶対忘れてはいけないこと。順位がどうとか、降格したところばっかり見て、いいことがあったのを忘れがちになるじゃないですか。あんなすごい試合があったのに、あんなにすごいゴールがあったのに、降格っていうだけで全部なかったことになってしまうのは......。

 なんか悪いことがあると「今年は変化です」みたいに言う人がいますが、いやいや、いいところは残しましょうよって思います。

 これは大宮に限った話じゃないですね。同じくJ3に降格したツエーゲン金沢も、大宮も、シーズンを見ていったらいいところが結構あって、それは頭の中に残しておかないと。勝ったチームのいいことだけを頭に残していくのは、僕は違うと思います。

後編「平畠さんが見つけた2023年J2語らずにはいられない5人」につづく>>

平畠啓史 
ひらはた・けいじ/1968年8月14日生まれ。大阪府出身。芸能界随一のサッカー通として知られ、サッカー愛溢れる語り口が人気で、多くのサッカー関連番組に出演中。『平畠啓史Jリーグ56クラブ巡礼2020 日本全国56人に会ってきた』(ヨシモトブックス)など、サッカー関連の著書も多い。

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