横浜FM、神戸、名古屋、浦和のJ1優勝争いを福田正博が解説 後半戦、抜け出すのはどのチームか? (3ページ目)
【特定の選手への依存がある名古屋】
特定選手への依存という点で言えば、名古屋にも懸念材料がある。名古屋のサッカーは守備を固めて相手を自陣に引き込み、ボールを奪ったら少ない手数で相手陣の広大なスペースを使いながら相手ゴールに迫っていく。
これは、キャスパー・ユンカー、マテウス・カストロ、永井謙佑がいるからこそ。つまり、スピードという武器を主体にした得点パターンの生命線となっている3選手のいずれかが欠けると、苦しくなるだろう。
ただし、攻撃に比重を置いたところからチームをつくっている横浜FMと異なり、名古屋の長谷川健太監督は手堅い守備をベースにするスタイルだ。そもそも得点数は少なく、チャンスをつくる回数も少ないのは想定内で、むしろチームの土台である守備での主力選手を欠く事態になるのが痛手になると感じる。
実際、横浜FM戦では出場停止明けで起用した米本拓司を、負傷のために本来の動きではなかったと前半37分で交代させたが、その判断の根底には勝負どころはまだシーズンの先にあると見ている部分もあるだろう。今季好調のチームを支えている米本には、そうした重要な試合で万全の働きを見せてもらいたい思いがあるはずだ。
首位の横浜FMとは勝ち点6差の浦和レッズは、第20節はFC東京とスコアレスドローで終えたが、相変わらず攻守のバランスが取れたサッカーをしている。
開幕から2連敗スタートとなった時は行く末を案じたが、その後のマチェイ・スコルジャ新監督の軌道修正は見事と言うしかない。開幕2連敗以降の18試合で負けたのは5月10日のサガン鳥栖戦のみで、ここ10試合は負けなしの5勝5分となっている。
ただし、注意しなければいけないのは、無敗という響きに誤魔化されてはいけない点だ。たとえば、5勝5分も10連勝もどちらも無敗と表現できるが、得られる勝ち点は「20」と「30」で、10点もの差がつく。勝ち点10差は単純計算で3試合+アルファになるが、実際には相手が負けてくれないとその差は埋まらないわけで、そこを理解しておく必要がある。
それを踏まえて浦和の話をすれば、名古屋よりも攻守のバランスの取れたサッカーをしているが、総得点は名古屋と同程度しかない。横浜FMや神戸のような圧倒的な得点力で勝ち点を積み重ねてきたチームではないだけに、ここから連勝していくためにはゴール数を増やしたいところだ。
しかし、そう簡単にいかないのがサッカーの難しさでもある。気がかりなのは、FC東京戦の開始6分で負傷交代した酒井宏樹の状態だ。浦和の攻撃は右サイドの酒井の攻撃参加があって初めて機能すると言っても過言ではないだけに、彼を数試合でも欠くことになれば、得点力に大きな影響が出る可能性はある。
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