中村憲剛と佐藤寿人が「なぜクラブの哲学が大事なのか」を明かす...「お金のあるチームが勝つわけではない」「長期政権の弊害」 (5ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

寿人 マリノスに関して言えば、補強が的確ですよね。これはシティ・グループの力もあると思うんですが、去年までいたレオ・セアラなんて、J3の琉球でも活躍できなかった選手ですよ。もちろん、ブラジルでの成長があったにせよ、はじめは大丈夫かと思いましたけど、見事に活躍しましたからね。

憲剛 トレーニングの質だったり、チームの空気感だったりというのは当然いいだろうけど、まだ実績がそこまでない選手でも、うまく機能させて成長させているのはすごいなと。角田(涼太朗)にしても、筑波大学を中退して入ってきて、代表に選出されるところまで行きましたから。

── 絶対的な評価基準があるんでしょうね。

憲剛 基準が高いのもそうだし、スタイルが明確なので、それに合った人材を探せばいい。獲得すべき選手がはっきりしているのではないでしょうか。

 マリノスもあのスタイルを作るまでは、かなりリスクがあったと思います。アンジェ・ポステコグルー監督の1年目の時は、残留争いにも巻き込まれていましたから。でも、そこで基盤を作ったからこそ、タイトルを取るために積み上げるものが明確になり、次の年に優勝できた。

 フロンターレに風間(八宏)さんが来た時も同じで、うしろの選手から意識を変えないといけなかったから、当然リスクは大きかった。でも、それを本気で押し通したチームが、紆余曲折あったなかで、今、自分たちのスタイルを手にしていると思います。

 苦しくなった時に我慢できるか、どうか──。しかし、この世界では「結果」に左右されるので、勝てなければ普通は待てないですよ。結果が出なければ、監督を代える判断をしなければなりません。でも、監督が代われば当然スタイルが変わるので、その回数が多くなればクラブとして積み上げることができない。選手たちも混乱してしまいます。

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