中村憲剛と佐藤寿人が「なぜクラブの哲学が大事なのか」を明かす...「お金のあるチームが勝つわけではない」「長期政権の弊害」 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

寿人 もちろん、同じ監督が長くやることの弊害もあって、維持することの難しさも同時に感じましたね。ミシャが6年やって、その後を引き継いだ森保(一)さんは4年で3回優勝を勝ち取ったんですけど、6年目の途中に解任になって......。

 その後に哲学を継承するところがうまくいかなかったというのは、僕はその時もう名古屋に移籍していましたけど、外から見ていて感じていました。実際に選手も、広島のサッカーに魅力を感じられなくなって出ていく、という流れも生まれてしまいましたから。

── 長期政権の弊害という意味では、フロンターレも鬼木達監督が7年目を迎えています。今季は苦しんでいますが、これまで結果を出し続けられた要因はどこにあるのでしょうか。

憲剛 鬼さんは同じことをやらないですから。もちろん、入ってくる選手の特長を生かすことでやることは変わるんですけど、鬼さん自身が常に新しいチャレンジ、アップデートをしようとする方なので。

寿人 練習メニューもけっこう、いろいろ変えてくるんですか?

憲剛 引退してから日常的に見続けているわけではないので、そこは正直わからない。これはライセンス講習会の講師の方も言っていたんですが、一度監督になってしまうと、インプットする機会と時間がなかなか取れないと。

 常に自チームの分析、対戦相手の分析、それに対しての自チームの準備に日々追われるので、アウトプットがほとんどになり、インプットがなかなかできない。監督を長くやればやるほど、自分のなかにある"財産"みたいなものが減ってくると言っていました。

 自分は止まっているつもりはないんだけど、指導者は孤独だし、インプットがなかなかできないうえに、インプットをしたとしても、それを腰を据えてチームに落とし込むほどの時間も猶予もなかなかないとなると、持っているものが枯渇していく感じがすると。

寿人 たしかに。どこかに学びに行くこともできないですからね。インプットする時間がないから、自分の引き出しのなかは減っていく一方なんですね。

3 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る