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「日本サッカー界の大きな問題」解決に取り組むカレン・ロバート 経営クラブの野望は「木更津からプレミアリーグへ」 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・構成 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 とはいえ、さすがのさすらい人も、経営者の立場にいる今、理想ばかりを掲げてはいられない現実もある。

 とりわけ、カレンが頭を悩ませているのは、コーチたちに降りかかる"30の壁"なる問題だ。

「30歳くらいになって結婚したり、子どもができたりすると、生活が厳しくなり、いいコーチが辞めていってしまうというのが、うちのクラブに限らず、サッカー界の大きな問題となっているんです」

 先にも触れたように、カレンがフットサルコートを作ったのは、いわば、"現役引退後も食っていく"ため。「実際、僕は経済的に落ち着きました」という。

 だけど、とつないで、カレンは続ける。

「その一方で、コーチなどのスタッフが安定しない。これをどうしようかっていうのが、今の僕の課題です」

 ひとつの解決策として、カレンが実行に移し始めているのは、「うちのコーチを体育教師として地域の学校に派遣させてもらう」ことだ。

「午前中に体育の授業を受け持つだけなら、午後のローヴァーズの練習にも差し支えないし、経済的にも多少安定していくのかな、と。しかも、この地域でのローヴァーズの認知度も上がりますから。

 今はまだその事例がひとつあるだけですけど、教員免許を持っているコーチも多いので、そういう形をみんながとれるようになれば、問題解決のひとつの仕組みになるのかなと思っています」

 カレンは「ただ漠然と、サッカークラブをやってます、というだけでは(クラブ経営は)難しい」と言い、「結局、生活が安定するレベルにいるのは、Jクラブのコーチだけ。離職率も高いし、全国の街クラブが考えないといけない課題なので、こうやればスタッフの生活が安定するかもしれないっていう、いい事例を全国に発信していけたらいいな、と思ってます」と話す。

 かつての木更津は、カレン曰く、「(千葉県の)蘇我から下(南)はサッカーがないからね、ってバカにされるぐらいにレベルが低かった」。

 事実、クラブ初のプロ契約選手として木更津に帰ってきた吉田も、小学校時代は千葉市内の少年団に、中学校時代は横浜F・マリノスのアカデミーに、高校時代は流通経済大柏高に通っており、地元で育てられた選手ではない。

 だが、裏を返せば、「ちゃんとした指導をすれば、もっとプロ選手が輩出できるような地域だということ」。その土壌はあると、カレンは考えている。

「このあたりはミネラル豊富な水のせい(全国的に見て水の硬度が高い)なのか、本当のところはどうかわかりませんが(笑)、身体能力が高い子が多い。だから、可能性はあると思っています。ローヴァーズからプロ選手を輩出するっていうのは、僕らのひとつの夢ではあります」

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