三笘薫にも伊東純也にもない魅力とは?鹿島アントラーズの快足ウインガー藤井智也にブレイクの予感
Jリーグ第3節。前節、川崎フロンターレに逆転負けをした鹿島アントラーズは、アウェーで横浜FCと対戦、1-3の勝利を収め、3位に浮上した。点差は2点だったが、内容的にはそれ以上で、判定次第では0-4もあり得た鹿島の完勝劇と言えた。その勝因を探ろうとした時に出てくる選手がふたりいる。
ひとりは佐野海舟。今季、ゼルビア町田から移籍してきた22歳の守備的MFだ。4-3-3のアンカーであるが、後方に鎮座ましましている重いタイプではなく、広範囲をカバーする機動力、生きのよさが売りだ。攻撃と守備、どちらの局面にも境界なく、鋭くボールに反応する。この試合では右サイドにサイドアタッカー然と何度か飛び出していき、チャンスを演出した。後半24分には自ら惜しい左足シュートも放っている。能力の高さ、将来性を感じさせる一撃でもあったが、その時、中央で藤井智也がフリーで構えていたことも事実だった。
このシーンで左足シュートを決めるか、藤井へのアシストを決めていれば、佐野こそがこの試合のマン・オブ・ザ・マッチだった。その佐野を抑えて筆者がその座に推す選手は、佐野がラストパスを送らなかった相手、つまり藤井になる。やはり鹿島が今季、サンフレッチェ広島から獲得した新戦力だ。
開幕から3試合連続でスタメンを飾る右ウイングは、前半9分、ペナルティエリアの右角付近でインサイドハーフ樋口雄太のパスを受けると、相手DFがふたりがかりで挟み込もうとするその間をすり抜けた。左足のタッチを交えながら軽やかにGKと1対1になると、右足で先制点を流し込んだ。
横浜FC戦で先制ゴールを決めた藤井智也(鹿島アントラーズ)この記事に関連する写真を見る 立命館大在学中から広島でプレーしていた24歳。広島は5バック(3バック)のチームなので、ポジションはウイングバックがメインだった。ウイングより1列半程度、低い位置で構えたからだろう。広島時代は71試合に出場しているにもかかわらず、挙げたゴールはわずかに2点。この日のゴールはJリーグ通算3点目となるゴールだった。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。