三笘薫にも伊東純也にもない魅力とは?鹿島アントラーズの快足ウインガー藤井智也にブレイクの予感 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Naoki Morita/AFLO SPORT

【藤井の加入で攻撃の幅が広がった鹿島】

 しかし、先述のとおり後半24分の場面では、ゴール前でフリーの状態で構えていた。佐野からパスがきていれば、この日1日で、広島時代に71試合を費やして挙げたゴール数に並ぶところだった。

 さらにこの日の藤井は、もう1点決めるチャンスがあった。正確に言えば決めていた。後半10分、樋口の折り返しをワントラップ。相手DFをかわしゴールネットを揺るがせていた。ところがその前に、鈴木優磨のヘディングパスを樋口が受けた瞬間、オフサイドだったのではないかというVAR判定の結果、藤井はゴールを取り消されてしまったのだ。プロ選手として、この日の前には2点しか決めてない藤井にとっては痛すぎる、かなり際どい判定だった。

 得点を挙げたのは前半だったが、先述のふたつのシーンをはじめ、藤井には後半のほうがチャンスは訪れていた。それは後半の頭から、前半プレーした4-3-3の右ウイングから、4-4-2の左サイドハーフにポジションを変えたことと大きな関係がある。サイドハーフと言っても相手との力関係で、左ウイング同然の位置で構えたわけだが、この右から左への移動により、藤井にはプレーの選択肢が広がることになった。

 右利きのドリブラーが左に回れば、切れ込んでシュートというプレーが可能になる。縦もあれば内もある。切れ込んでシュートが望みにくく、センタリングに偏りがちな右ウイングより、広角なプレーが可能となる。

 鹿島の攻勢は、藤井のポジション移動とともに加速した。戦術面でも文字どおりのキープレーヤーになっていた。「鹿島といえばジーコサッカー」と言いたくなるほど、これまで旧ブラジル式の4-2-2-2的なサッカーに陥りがちだった。ウイングのいないサッカーである。ウインガーは松村優太ぐらいで、彼にしてもケガなどで、スタメンとして活躍する機会は少なかった。そこに今季、藤井が加わった。そして実際、攻撃の幅は広がった。鹿島はいい補強をした。

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