鹿島アントラーズに明るい変化の兆し。まさかの逆転負けもポジティブに捉えることができるわけ (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 人数をかけた中盤で狙いどおりにボールを奪うことができれば、必然、狙いどおりのカウンター攻撃にもつながりやすい。

 前半37分、相手センターバックからの縦パスをMFディエゴ・ピトゥカが難なくカットし、すぐさまDFラインの背後へ送った1本のパスで藤井が抜け出したシーンなどは、まさに鹿島が目論んでいたカウンターだったに違いない。

 昨季途中、岩政監督が就任して以降、なかなか結果が得られずに苦しんだ時期もあった鹿島だが、今季開幕前のキャンプを経て、戦術の浸透が進んでいることを印象づける試合だったことは確かだ。

 それと同時に、新戦力がいち早くチームに適応していることもまた、今季の鹿島に見るポジティブな材料のひとつだろう。

 この試合、鹿島の先発メンバーには、知念、藤井の他、MF佐野海舟、DF植田直通と、今季移籍加入の選手が4人も名を連ねていた。一般論で言えば、決して少なくはない数である。

 にもかかわらず、前述したように戦術の浸透度は上々。各選手がチームとしての戦い方に無理なく収まり、しかも、それぞれの特長を発揮することができていた。

 攻撃の中心を担う鈴木は、「知念の存在はデカい」と話し、「ひとりでキープできるし、(相手チームにとっての)危険が散らばるほど、自分は目の前の相手に集中できる」と、頼もしい相棒を讃える。

 今季が初のJ1挑戦となる佐野にしても、アンカーとして高いボール奪取能力を披露。後半には奪ったボールを自ら敵陣まで持ち運び、カウンターにつなげるプレーも披露した。

 だがその一方で、鈴木が「甘くないなと感じた。(川崎は)さすがは近年のJリーグを引っ張っていたクラブだと、最後の最後に感じた」とも話しているように、鹿島が土壇場で川崎の底力に屈した試合は、岩政監督曰く、「もったいない試合」でもあった。

 41歳の指揮官が続ける。

「相手が(退場者が出て)10人になって、自分たちが前に出なければいけないのに、彼らのほうが出てきた。そこは反省しないといけない。1失点目をしたところと、2失点目までの時間。そこでの戦い方、姿勢は問われないといけない」

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