ヴィッセル神戸、昨季の残留争いの戦い方から今季はサッカーをどう変えるのか。吉田孝行監督がチームに植えつけたい攻撃スタイル (2ページ目)

  • 高村美砂●取材・構成 text&photo by Takamura Misa

 その後、22節の鹿島アントラーズ戦で引き分けたあと連敗を喫するなど、再び窮地に立たされたが、未消化だった26節のFC東京戦や27節の湘南ベルマーレ戦を含めて5連勝を飾り、最終節を待たずしてJ1残留を確定させた。"吉田ヴィッセル"だけの成績を見れば、リーグ3位の勝率だった。

 その戦いにおいて、評価すべきは失点を大きく減少させたこと。事実、吉田が指揮を執った16試合での1試合平均失点数は、(同期間の)リーグ平均1.13に対して0.94。これは、リーグトップを誇る数字だ。片や1試合平均得点数は、リーグ平均1.99を下回る1.25にとどまったものの、不用意な失点が大幅に減った事実は、残留を引き寄せるカギになった。

「僕の前に監督をされていた(ミゲル・アンヘル・)ロティーナさんのサッカーは、特に守備の考え方が僕の理想と近かったので、チーム作りはそれをベースに、チームとして攻撃と守備のボールの奪いどころを明確にすることから着手しました。それによって、やや構える守備から、より高い位置でボールを奪う守備に変化させたいという狙いもありました。

 それを形にするには、いつボールを奪うのか、無理だった時にはどう対応するのか、という共通理解のもと、相手のシステム、出方によっても、柔軟に戦い方を変化させながら試合を進める必要がありますが、そのことに全員がポジティブに向き合ってくれたことで失点数を減らせたと考えています。

 また攻撃についても、ただ背後を取るのではなく、どこに狙いを定めるのか、どう相手の守備を攻略するのか、という同じ絵を描くことで少しずつ形作られていきました。なかには運を引き寄せて勝った試合もありましたけど、最終的にイメージしていたより多い白星を挙げられたことからも、ある程度は自分の狙いとするサッカーができたと受け止めています」

 もっとも、その過程で見られた高い位置でボールを奪い、縦に速い攻撃を狙いとするサッカーは、「あくまで"残留争い"というイレギュラーな状況での戦い方でもあった」と吉田は言う。また、シーズン前に描いた目標とはかけ離れた順位に終わった反省からも、今シーズンは一年を通して結果を求めなければいけないと気を引き締めた。

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