ヴィッセル神戸、昨季の残留争いの戦い方から今季はサッカーをどう変えるのか。吉田孝行監督がチームに植えつけたい攻撃スタイル (4ページ目)

  • 高村美砂●取材・構成 text&photo by Takamura Misa

 守備においては、時に個人の特徴を消してでもチーム戦術に徹してもらわないといけないこともあると思いますが、攻撃についてはできるだけ、個人の特徴に応じて、また相手のスタイルに応じて、試合ごとに柔軟に変化させていきたいと考えています。

 ただし、そうした変化はあくまで"ベース"があってこそ。裏を返せば、ベースがなければ変化も見出せない。だからこそ、昨年も敷いた4-3-3もしくは4-2-3-1のシステムを継続しながら、チームとしてのベースとなる戦い方をしっかり構築したうえで、柔軟に変化させていきたいと思っています」

 昨年の成績を真摯に受け止めながらも、目標はタイトルに据えた。そして、それを実現するためにも選手には"競争・共存"を求めたいと話す。

「先にも例に挙げたF・マリノスは、どの試合も常に90分間を通して強度を落とさずに戦えたことが、優勝に辿り着いた理由のひとつだと分析しています。いや、落ちないどころか交代によってパワーアップしていく感すらあった。

 それは、先発でピッチに立つ11人に限らず、チーム、グループとして戦えている証拠だと思いますが、それと同じように我々もポジションごとに競争・共存をしながら、一丸となって戦っていきたいと思っています。そのためには、下からの突き上げを求める意味でも、若い選手を成長させていかなければいけないという使命も感じています。

 と同時に、若い選手にも、僕や周りの選手に言われたことを吸収し、それを試合のなかで臨機応変に使いこなせる対応力を身につけてもらいたい。せっかくすばらしいキャリアを備えた選手がたくさんいるチームにいるんですから、そこで過ごす時間を無駄にせず、いろんなことにポジティブに向き合って競争に加わり、選手層を厚くしてもらいたいと考えています」

 ヴィッセルでの監督業は今年で5シーズン目ながら、吉田がシーズンの始めからチーム作りに取り組むのは2018年に続き、今回で2度目。そのなかでキャンプから積み上げてきた"吉田ヴィッセル"の色がどのようにピッチで表現されるのか。

「今年も一緒にヴィッセルのエンブレムを背負って、ともに戦える仲間がいることを心強く感じながら、これまで以上に強いヴィッセルにしていきたい」

 古巣愛を従え、"吉田ヴィッセル"は新たな航海に出る。

(文中敬称略)

吉田孝行(よしだ・たかゆき)
1977年3月14日生まれ。兵庫県出身。FWで活躍した現役時は、滝川第二高を卒業後に横浜フリューゲルス入り。以降、横浜F・マリノス、大分トリニータ、ヴィッセル神戸でプレー。2013年に現役を引退し、2015年に神戸のコーチに就任。そして2017年、シーズン途中から監督としてチームを指揮することに。翌年シーズン途中で退任するも、2019年には再びシーズン途中から神戸の監督に復帰。その後、Ⅴ・ファーレン長崎のコーチ、監督を経て、昨季強化部スタッフとして神戸に戻るも、またもシーズン途中から指揮官を務めることになった。

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