サガン鳥栖が躍進を遂げた理由。選手たちが明かす「戦力ダウンの降格有力候補」からの飛躍 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Kyodo news

「監督がブレないから自信を持ってプレーできる」

 たとえば元韓国代表のファン・ソッコは33歳になるディフェンダーだが、清水エスパルスから移籍してきて、変化を恐れずに練習に取り組んでいた。ほかの選手たちはその姿を見て、「ワールドカップにも出ているソッコさんが、あれだけやるんだから......」という空気になった。それぞれが現状に甘んじず、周りの評価を一新させた。 

「まず公平な競争がチームにあって。それぞれが必要な準備をして試合に挑み、練習で積み上げてきたことを出し、結果を残し、また競争し、成長する。今の鳥栖には、選手としてあるべき環境があるんだと思います」

 ガンバ大阪から鳥栖に戻ってきたFW小野裕二は、鳥栖が好転した理由を端的にそう説明している。ガンバで契約満了後、他の話も聞かずに鳥栖からのオファーを選んだ。

「(川井)健太さんには、『違いを作れ』と言われます。選手が迷いなく試合で戦えているのが大きいですね。相手によってやり方を変えることはありますけど、とにかく監督がブレない。だからこそ自然と選手も、"できるんだ"って自信を持ってプレーできているんです。みんな手応えを感じながらやっているはずです。ただ、個人的にはもっとしっかり(先発で)試合に出て、貢献したいですね」

 小野は意欲的に言っている。

「山形ではサブ組だったので、ずっと(川井)健太さんに見てもらっていました」

 そう語ったのは、MF堀米勇輝である。昨シーズンはJ2のモンテディオ山形に所属し、控え組で、当時コーチだった川井監督の指導を受けていた。

「健太さんのような人には、会ったことがないですね。たとえばシュートの時、『ボールを見るな』って言うんです。『キーパーを見ろ』って。間接視野にボールを入れて、キーパーを見れば、(選択を)変えられるっていうことだと思うんですけど、普通は『ボールを見て蹴れ』となるわけで、伝え方が全然違うんです」
 
 川井監督が鳥栖を率いることになり、堀米も鳥栖に引っ張られて来ることになった。

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