サガン鳥栖が躍進を遂げた理由。選手たちが明かす「戦力ダウンの降格有力候補」からの飛躍 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Kyodo news

「正直、鳥栖に移籍することになって不安はありました。J2でろくに試合に出られていなかった自分がJ1で本当にやれるのかって。キャンプ後の開幕戦でスタメンに入れたんですが、気負いすぎていたんでしょうね。健太さんが来て、『ミスしても、死ぬわけじゃないじゃん?』って。そう言われて、余計な力みが抜けて手応えのあるプレーができました」
 
 2009年のU‐17ワールドカップに出場するなど、「左利きの天才アタッカー」と期待されていた男、堀米はその片鱗を見せた。キャリアハイの活躍だった。第12節FC東京戦で決勝点となった直接FKは語り草だろう。ただ後半戦は、コロナ感染や打撲などで継続的に試合に出られなくなった。熾烈なポジション争いのなか、再び定位置を取り返す立場になった。

「せっかく前半戦で感触を掴んでいたのに、コンディションをなかなか戻せなくて......。だから、次はシーズンを通して戦えるようになりたいですね。せっかくこのチームでできているんだから、サッカーを楽しみたい。健太さんも言っているように、『自分たちが楽しまなかったら、サポーターも楽しくないし、結果もついてこない』ので」

 少しでも気を抜けば、誰かにポジションを奪われる。しかし、そこにあるのは殺伐とした競争原理ではない。サッカーを楽しむ。それに没頭するなかで起きる争いで、プロサッカークラブでは極めて健全なものだ。

「みんな、まだまだできると思うんです、ほんのちょっとしたところを突き詰めていくだけで。そこで満足しちゃったら、停滞だから」

 チームをけん引する朴の言葉である。2022年の鳥栖は、2023年の鳥栖の土台になるはずだ。

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