3連覇に挑むには準備不足だった川崎フロンターレ。来季、「常勝軍団」としての真価が問われる (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

 とはいえ、最後の1試合だけでなく、シーズン全体を総括するとなると、鬼木監督の言葉も自然と厳しいものになる。むしろ、これだけの試合ができるチームなのに、と後悔の念を強くしていたかもしれない。

「リーグ戦(の結果)は年間を通してのもの。いろんなところで取りこぼしをした事実がある。一つひとつの勝ち負けもそうだが、得点、失点でも、もっと取れたり、もっと防げたりというところがあった。今日の試合だけでなく、年間を通して突き詰めていく必要がある」

 今季の川崎に、昨季までの強さが見られなかったことは間違いない。というより、昨季後半には、すでに陰りが見え始めていた。

 MF三笘薫、田中碧が昨季途中に海外移籍。主力中の主力が抜けた穴は簡単に埋まるはずもなく、次第に相手をねじ伏せるような強さは失われていった。

 また、昨季終了後には、MF旗手怜央も海外移籍。東京五輪世代の選手たちが次々とクラブを離れる一方で、近年の強さを支えてきた主力メンバーは年齢を重ね、今年36歳のMF家長昭博を筆頭に、30代も半ばに入る選手が増えていた。

 このまま現有戦力に頼って勝ち続けることは難しい。3連覇を成し遂げようと思えば、戦力補強は不可欠のはずだった。

 しかし、コンサドーレ札幌から移籍してきたMFチャナティップや、大卒ルーキーのDF佐々木旭ら、新戦力の加入はあったものの、新たな勢いを生み出すまでには至らない。鬼木監督も「若い選手を戦力としてどうやって育てていくかを意識していた」とは言うが、少なくとも停滞するチームの起爆剤となるような選手は現れなかった。

「代表に絡むような選手があれだけ抜けると、難しくなるのは覚悟していた」

 キャプテンのDF谷口彰悟はそう語り、苦しい戦いが続いた今季を振り返る。

「ただ勝つだけでなく、常に満足しないで(内容を)突き詰める、そこまでの余裕がなかった。今年はそうやって戦っていくしかないと、やれることをやり続けた。昨年、一昨年の(強い川崎の)印象があるだけに、(周囲からは)大丈夫かと思われたかもしれないが、こんなものだろうと思っている部分もあった」

 3連覇を狙うシーズンとしては、そもそも事前の準備が足りなかった。あえて厳しい見方をするならば、そう断じてもいいのかもしれない。

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