サガン鳥栖を率いる異色の指導者のリーダー論。「ブレるということ自体、意味がわからない」
川井健太監督(サガン鳥栖)インタビュー(後編)
前編「Jリーグに新風を吹き込んだサガン鳥栖監督に聞く。『残留という言葉は一回も使ってない』」はこちら>>
就任1年目でサッカーの質を大きく高めた川井健太監督(サガン鳥栖)この記事に関連する写真を見る リーダーが開明的な発想を持ち、選手を選ぶ目利きであり、トレーニングにおいてディテールを積み重ねることができたら、成功に直結するだろう。シンプルな理屈だ。しかし、簡単なことではない。
今シーズン、それをやってのけているのが、サガン鳥栖の川井健太監督(41歳)だ。どんな相手でも、ボールを譲り渡すようなことをしない。自分たちが主導権を握ってプレーする。
「この試合だけでも、自分たちのものを捨てたほうが勝てる可能性が高くなる、と思うことはあります。でも、僕はそれを許せない」
川井監督は言う。理知的だが、頑固さも感じさせる。その信念に引力があるのだろう。
「胸を張れるサッカー」
今シーズン、鳥栖の選手たちは充実感を覚えている。プレーの確信が勝利を呼び込み、さらに自信を与え、プレーを革新させる。日本代表入りする選手が出るなど、成長を促している。
今や多くの識者も魅了され、練習見学に名のある指導者も足を運ぶ。市場価値は急騰。Jリーグ30年の歴史を振り返っても、異色の指揮官だろう。
「自分で解決する術を最後まで持ちたい」
川井監督の言葉だ。
――川井監督のリーダー論とは?
「自分の場合、フラットにいたいので、強くはないです。ただ間違いないのは、監督は決断者であること。その決断に根拠を持たないといけない。選手によく言うのは、『AとBがあって、どっち選びますか』って。どっちが正解かわからんでも、どっちか選んだほうを正解にさせるというパワーの入れ方ではやっています」
――選手の信望の強さを感じさせますが、心をつかむ作業をしているんですか?
「そうことを考えてやらないといけない、と思ったこともありました。『監督はいろいろ気を遣わないといけない』って言われますし、マネジメントという中途半端な横文字もありますし(笑)。でも結局のところ、組織を動かすのが大事で、サガン鳥栖というチームがいい方向で結果を出せばいいわけで、飾らず、僕は僕で行く。それで『ついてきたかったらついてこい』って感覚です。ただ、偉そうにするのは嫌いなので、手を取り合うところは手を取り合う。監督が偉いではなく、ひとりの人間としては対等に」
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