サガン鳥栖を率いる異色の指導者のリーダー論。「ブレるということ自体、意味がわからない」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 photo by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

「ボール1個分は改善できる」

――クロスの連続からの得点シーンも少なくありません。愛媛時代の教え子である長沼洋一選手をシーズン途中で獲得したのもその一端で?

「そうですね。根本的に愛媛と一緒なので、そこからプラスアルファはありますが、大枠は僕の考えを理解しています。僕とも付き合いは一番長いと思うので。話したのは、『家族も一緒に来ているの?』くらい(笑)」

――個人的には、中野伸哉選手のサッカーセンスは日本サッカーの希望だと思っています。

「おそらく、伸哉はポジション的にスペシャルになる可能性もある選手ですが、どちらかと言えば元ドイツ代表の(フィリップ・)ラームみたいなタイプ(ボランチやサイドバックをこなすポリバレントな選手)かな、と。その意味では、見えているし、いいものを持っています」

――左利きは独特のリズムを出します。それを引き出すことが、日本サッカー全体のステージを上がるきっかけになるかもしれません。中野だけでなく、他のJクラブと比べてチームに左利きが多くなっている印象です。

「左利きは好きですね。答えは解明できていないですけど、たとえば左利きの選手って、カットインからシュートの確率が高い。マイノリティのアドバンテージかもしれません。右利き文化で、育成から右利き同士は多く対戦経験を積み重ねていますが、ボランチに左利きの手塚康平を獲ったのも、左方向にボールを配給できるのがあって。僕も左利きだったんですが、文字を書くのは左だったのが右に直されて、キックも左だったのに、みんなが右だから右で蹴るようになった(笑)」

――最後になりますが、名将は運の強さという超常的なものも持っている気がします。

「それはあると思います。でも、僕は運という表現は使わないです。監督は選手に託すしかないじゃないですか? それで、ボール1個分で勝っていたとかを、運と呼ぶんでしょうけど、その運さえも僕は凌駕していきたい。たとえば『相手GKがよかった』という試合で、相手GKは変えられないけど、自分たちがもう1個分、上に蹴る技術を身につけていたら、勝てた可能性は高い。ボール1個分は改善できるんです」

Profile
川井健太(かわい・けんた)
1981年6月7日、愛媛県生まれ。現役時代は愛媛FCでプレー。指導者としては環太平洋短期大学部サッカー部監督を皮切りに、愛媛FCレディースヘッドコーチ、日本サッカー協会ナショナルトレセンコーチ、愛媛FCレディース監督、愛媛FC U‐18監督、愛媛FC監督、モンテディオ山形コーチを経て、今シーズンからサガン鳥栖監督に就任した。

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