今季のJ2で接戦が続く理由。首位・横浜FCが昇格に一歩前進も指揮官は「不安定で苦しい」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

戦いのカギを握るGK

 1-0で勝利した岡山戦も、90分を通して圧倒したわけではない。前半、序盤こそ力の差を見せつけたが、プレッシングに遭うと思うようにボールをつなげなくなる。右センターバックに入った中村拓海からしか、可能性のあるボールが出ない。後半は、途中まで岡山ペースだった。しかし押し込まれるなかで、後半26分、与えたコーナーキックの流れから鮮やかなカウンターを繰り出し、どうにか決勝点を決めた。

 一方の岡山はやや不運だった。6人の選手がコロナ陽性判定で欠場。当日に作った急造チームだった。それでも、拮抗した戦いを見せた。前線からのプレスでビルドアップを分断。ヨルディ・バイスを中心にサイドへボールを展開し、前線のミッチェル・デュークが高さ、強さを見せつけ、そのセカンドボールを粘り強く拾った。

「『前から強烈に行こう』と、週の頭から(のトレーニングで)選手たちには伝えていました」

 岡山の木山隆之監督は、横浜FC対策を整えていた。

「自由にボールを持たれると、いいプレーを出されてしまうので。前からタイトにはめ、アバウトなプレーを誘発させて、自分たちがボールを持てる時間を増やしながら、サイドの強いところにボールを入れていく、という戦いをしました。"勝てる"という瞬間をたくさん作りましたが......」

 岡山にも勝機はあったと言えるだろう。

 今シーズンのJ2には、プレーの仕組みを高い水準で作り上げられているチームはない。これからクオリティが劇的に向上することは考えられず、士気の高さやコンディションといった側面が大きく影響するだろう。言い換えれば、どこが勝ってもおかしくはない。横浜FCが岩手、大宮に連敗を喫しているのは、何よりの証左だ。

 上から下までほぼ全チームに自動昇格、プレーオフ、そして残留争いがかかっているだけに、気が抜けない接戦が続く。

 今後の戦いで、どこが焦点になるのか。
 
 あえて言えば、ゴールキーパーになる。例年、ビッグセーブを連発するGKが、昇格に大きく貢献している。不確定要素が強い戦いを制するのは、GKという単純な「個」である。

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