川崎フロンターレにとって特別な意味を持つ1勝となるか。最高峰の戦いで見せた王者の覚悟

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 だが、この日は違った。

 川崎の選手たちは、立ち上がりから気持ちの入ったプレーを見せ続けた。相手のハイプレスにもひるむことなくパスをつなぎ、サイド攻撃、あるいはDFラインの背後を狙ったロングパスを有効に組み合わせ、相手ゴールに迫った。

 前半25分に生まれた先制点も、DF谷口彰悟が右サイド奥へ送ったロングボールを、高い位置に進出していたDF山根視来がダイレクトでゴール前に折り返し、これをFWレアンドロ・ダミアンが頭で決めるというダイナミック、かつ美しいゴールだった。

 その後、横浜FMが前半終了間際に高速カウンターで同点に追いつくと、試合は一進一退のこう着状態に陥ったが、それでも最後の最後に、攻め上がっていたDFジェジエウが豪快なヘディングシュートを叩き込んで勝ち越し。首位チームを相手に、力づくで勝ち点3をもぎとった。

 鬼木監督は言う。

「一番大事なのは気持ちの部分。覚悟や勇気だと選手にも話した。気持ちの強さを見せて勝てたことで、ここからの戦いに大きく変化が出るのではないかと思う」

 崖っぷちで踏みとどまった川崎は、順位を4位に上げ、首位との勝ち点差も8まで縮めた。貴重な勝ち点3は、3連覇への可能性をつなぎとめてくれた。

 とはいえ、現状、首位に立っているのは横浜FMである。川崎が優勝するには、自分たちが勝ち続けるだけでは足りず、横浜FMが勝ち点を落とすことも必要な条件となる。

 決勝ゴールをアシストしたFW家長昭博は、落ち着いた様子で「勝ち点3を取れてよかった。首の皮一枚つながったと思う」と話し、こう続ける。

「相手はすばらしいチーム。試合自体はどっちが勝ってもおかしくなかった。マリノスも、これからそんなに負けるチームじゃない」

 川崎には過去5シーズンで4度の優勝という、貴重な成功体験がある。それはすなわち、勝者のメンタリティと言い換えてもいいだろう。

 だが、それについても家長は、劇的勝利に沸く周囲をたしなめるように「そういうアドバンテージは今、僕らは持っていない。マリノスが一番いいサッカーをしているので、僕らは謙虚にやらないといけない。今はそれを求められる」と語る。

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