横浜F・マリノスの指揮官は「ベストゲーム」と評価。では、なぜ川崎フロンターレ相手につまずいたのか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 8月7日、首位に立つ横浜F・マリノスは、昨季王者である川崎フロンターレとの天王山を戦っている。結果は2-1の敗戦となった。試合終了間際、無念の一発を浴びた。

 横浜FMは「力闘した」と言えるだろう。猛暑の気配が残るピッチで走りきった。前線からの果敢なプレッシングで出どころを塞ぎ、攻守の切り替えではオートマティックに反応し、弾丸のように前線へ飛び出した。同点ゴールは、まさにその展開だった。十分に勝てる要素があったし、「引き分けが妥当」という彼らの口惜しさもわからないではない。

「我々は支配するサッカーをしたと言える。自分が見たなかでは、今シーズン、ベストのパフォーマンスをした。選手たちを誇りに思う」

 Jリーグ覇権奪回を目指す横浜FMのケヴィン・マスカット監督は、そう敗戦の弁を述べた。はたして、それは強がりだったのか、本心だったのか。

後半アディショナルタイムに決勝ゴールを決められ、呆然とするレオ・セアラ(横浜F・マリノス)後半アディショナルタイムに決勝ゴールを決められ、呆然とするレオ・セアラ(横浜F・マリノス)この記事に関連する写真を見る 横浜FMの選手たちは、前半から一心不乱に戦っていた。ただ、攻撃に関しては目を覆うほどに単調だった。「前へ」という意識が強すぎ、リズムが出ず、「ゲームを支配していた」とは言えない。ボールを握ってタメを作ることで優位を作れるはずが、スピード、パワー系のアタッカーばかりを並べていることもあって、どうしても攻め急ぐ展開になった。

 結果として45分間、ほぼ防御ラインを突破できていない。

 しかし、王者川崎にも、昨シーズン前半までの面影はなかった。家長昭博を中心に変幻自在にポジションを変え、撹乱しながら序盤は優位に立っているが、足を使うことで消耗した。ボールを運ぶところでミスが出始め、じりじりとしたゲームに引きずり込まれつつあった。

 だが前半25分、谷口彰悟がバックラインから蹴り込んだボールを、山根視来が右サイドからダイレクトで折り返し、レアンドロ・ダミアンがヘッドで叩き込む。

「今日負けたら終わり。シーズンがかかっている」(山根)

 背水の陣の覚悟は、先制点だけでなく、逆転弾にもつながる。

 では、横浜FMはその勢いに流されたか?

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