横浜F・マリノスの指揮官は「ベストゲーム」と評価。では、なぜ川崎フロンターレ相手につまずいたのか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

後手に回った選手交代

 繰り返すが、選手は奮闘していたし、互角にぶつかり合い、各所で質の高いプレーがあった。前半アディショナルタイム、横浜FMは左からのクロスをニアでエドゥアルドがひっかけ、エウベルがマルコス・ジュニオールとのワンツーで抜け出す。右サイドからインサイドに入った仲川輝人が裏に抜け出して受けると、GKと1対1を、ボールを浮かして冷静に決めた。迫力満点で、典型的なカウンターだった。

 マスカット監督は勝利の算段を整えていただろう。後半に入って、次々に有力選手を投入し、総力をかけた消耗戦で上回るのは、常套手段のひとつだった。ただ、前半で西村拓真の負傷交代により1枚カードを使っていたことで、レオ・セアラひとりは後半18分に投入したが、積極的に交代カードを切った川崎よりも後手に回った。

 端的に言えば、水沼宏太の投入が遅れた。

 後半37分にピッチに立った水沼は、横浜FMに流れを与えている。32歳で初めて代表デビューを飾った男は、知性を感じさせるアタッカーで、決して急がない。ボールを受けた瞬間、味方が猛然と裏に走り込むシーンがあったが、一か八かのタイミングだったことで、あえて後ろに下げ、ボールを回してリズムを作り出していた。また、クロスのシーンではファーに送り、ニアで引っ掛けられ、カウンターを浴びるリスクマネジメントもしていた。

 水沼のおかげで、ようやく右サイドを崩せるようになった。押し込む展開が増え、決定機も作り出した。勝機はあった。

「今シーズン、一番いいのはマリノスで。(王者とはいえ)僕らは謙虚にやらなきゃいけない」(家長)

 E-1選手権に7人も代表選手が選ばれるほど、水沼を中心にした横浜FMのコンビネーションはJリーグで突出している。

 しかし、水沼の投入が遅れたことで、すでに味方は消耗していた。前がかかりになると、守る力の弱さを露呈し、ひとりひとりに寄せきれていない。そこで老練な家長にクロスを上げられて、足をつりながらも豪快に跳躍したDFジェジエウのヘディングを被弾した。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る