ヴィッセル神戸、またもビジョンなき監督交代劇。クラブ運営のひずみが不信を生む (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 吉田監督になって、チームは一時的に好転するかもしれない。土壇場に追い込まれた有力な選手たちは、「窮鼠猫を噛む」どころか、手負いの獅子も同然である。高禄を食む選手たちが、高い士気で挑むわけで、その結果は監督の力量とは何ら関係がない。あくまで、カンフル剤のようなものだろう。

 吉田監督はかつて神戸を率いた時も、その後に指揮を取ったJ2のV・ファーレン長崎でも、監督解任後にクラブスタッフのような形でチームに関わっている。これ自体、サッカー先進国では考えられず、選手からは白い目で見られるだろう。監督とは現場のリーダーで、だからこそ尊敬されるべきだが、それだけに、職を解かれたら、そこにとどまることは「恥辱」なのだ。

 神戸というクラブは、こうしたケースが多すぎる。日常になって鈍化しているだけで、ここにもクラブマネジメントのひずみが見える。そもそもスポーツディレクターには、監督時代のハラスメント問題がくすぶる人物を就任させている。

 監督交代というリセットで、瞬間的にどうにかなるところはある。しかし、リセットを繰り返した集団は確実に摩耗する。有力選手を多く入れたら、一時的に昨シーズンのように結果を残せるかもしれないが、それはスタイルとは呼べない。

 7月2日、神戸はアウェーの鳥栖に乗り込み、新体制の初陣を戦う。

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