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ヴィッセル神戸、またもビジョンなき監督交代劇。クラブ運営のひずみが不信を生む

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 6月26日の浦和レッズ戦後、スタジアムから出てくるミゲル・アンヘル・ロティーナ監督を直撃するつもりだった。

 筆者はスペインで、財前宣之のノンフィクション取材やセルタ監督時代の躍進でロティーナにインタビューをした経験があり、ビルバオでは食事の席をともにしたこともある。東京ヴェルディ、セレッソ大阪時代は試合後によく言葉をかわした。しかめ面だが、話してみると丁寧で気さくな人物で、誠実だからこそ、あまり浮かれた調子にはならないのだろう。

 ただ、0-1というスコア以上の惨敗のせいか、この日の沈鬱さは度を越えていた。思いつめた表情で、とても声をかけられる様子ではなかった。右手に持った携帯電話を耳に押し当て、速足でバスのほうへ歩き去った。

 しかし、この時点で「解任」の匂いはしていない。すでに発表されたサガン鳥栖のMF飯野七聖や仁川ユナイテッドFCのモンテネグロ代表FWステファン・ムゴシャなど、いくつか補強話は聞こえてきていたが、それは「現体制でいく」サインでもあった。

3カ月足らずでヴィッセル神戸を去ることになったミゲル・アンヘル・ロティーナ監督3カ月足らずでヴィッセル神戸を去ることになったミゲル・アンヘル・ロティーナ監督この記事に関連する写真を見る その晩から翌日にかけて、数名、もしくはたったひとりの決断で契約解除に動いたのだろう。性急な決断に、明晰なビジョンよりも感情的衝動が見えた。6月28日、吉田孝行監督の"再登板"は、それほどに"思いつき"に近い。

 ロティーナ解任劇には、ヴィッセル神戸の実状と「今ある危機」が透けていた。

「三木谷浩史会長が剛腕を振るう」

 スポルティーバの前回の記事でそう書いたが、まさにその通りになった。

 結局のところ、クラブとしてのビジョンがないに等しいのだ。そもそも、「バルサ化」で「ロティーナ監督招聘」は悪い冗談だった。質実剛健のバスク人監督は、「守りありき」の人で、たとえば以前クラブを率いたフアン・マヌエル・リージョとは逆側のタイプである。優劣ではなく、あくまでタイプの問題で、問題はタイプの違うひとりを、ビジョンもなく「スペイン人」という括りで契約した軽率さだ。

 チーム内でズレが生まれるのは、自然の流れだった。

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