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元レフェリー・家本政明が挙げた印象深い元Jリーガー5人。「人格者」「ずるいプレーなし」「視野から消える」名手たち (3ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

レフェリーとのコミュニケーションがうまかった

中村憲剛(MF/元川崎フロンターレ)

 中村憲剛選手は前編でお伝えしたように、遠藤保仁選手(ジュビロ磐田)や中村俊輔選手(横浜FC)、小野伸二選手(北海道コンサドーレ札幌)らと似たタイプだと思っています。

 頭がよくてクレバーで、ピッチの出来事を常に俯瞰して見ることができて、チームを動かす力がある。なおかつ人間としての魅力もある方で、非常に好きなスタイルの選手でした。

 レフェリングに対しても興奮せず、いい意味でレフェリーとの駆け引きがうまかったと思います。

 時折、わざと半分怒りながらレフェリーにプレッシャーを与えてくる時があるんです。でもこちらが「いやいや、それはないよ」と言うと、ニコッと笑って「そうですよね」といったようなやり取りは結構ありました。

 ほかのレフェリーにも同じようなことをしているかというと、相手によって対応を変えているような印象がありました。決して感情的にならず、いろんなコミュニケーションを取りながらできる選手でしたね。

 川崎は中盤のスペースをうまく使うチームなので「中盤で邪魔な時は言ってね」と話すことがあったんですけど、「好きにポジション取ってください」と言ってくれる選手で、よく「この辺は大丈夫?」と聞いていました。そういう会話を通して、いろんなことを教えてくれました。

 彼がエンターテイナーだなと思うのは、ここぞという時にサポーターを煽って、スタジアム全体を巻き込んで一体にする力がありましたよね。たとえば先ほど似たタイプで挙げた遠藤選手や中村俊輔選手がサポーターを煽るような姿は見たことがないと思うんですけど、彼はそういうこともできるハートの熱い選手でした。

 現役を引退して、解説をする機会が多いと思うんですが、聞いていて本当に戦術眼の高さがわかりますよね。将棋のように何手も先が見えていて、頭の中でずっと局面が動いているんだろうなと思います。

 それは現役の頃からそういう印象がありましたし、遠藤選手と同じように彼の頭の中も覗いてみたいと思わせる選手でした。

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