家本政明がレフェリー視点で明かす、「これはすごい!」と思った現役Jリーガー5人

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

元レフェリー・家本政明が感銘を受けたJリーガー 前編

Jリーグで最多試合数を担当し、2021シーズンいっぱいでレフェリーを引退した家本政明さん。幾多の選手たちのプレーを、ピッチ上のいちばん近い位置から見てきたわけだが、そんな家本さんに、これまで見てきたなかで、「これはすごい!」と思ったJリーガーを挙げてもらった。

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家本氏が「頭の中を見てみたい」と言う遠藤保仁家本氏が「頭の中を見てみたい」と言う遠藤保仁この記事に関連する写真を見る 今回、Jリーグなどで主審を務めてきたなかで、感銘を受けた現役(前編)・OB(後編)選手を5名ずつ選ばせていただきました。選考にあたって、私のなかの5つの基準をもとにしています。

 1つ目が海外で通用するか。2つ目が人間性・人柄、3つ目が試合を動かす力、4つ目が人を魅了するプレーができるか、5つ目が広い視野・戦術眼。この5つを基準にしていることを前提に、読んでいただければと思います。

傑出した足元のボールテクニック

西川周作(GK/浦和レッズ)

 西川周作選手は、大分トリニータ、サンフレッチェ広島、浦和レッズとずっと見てきましたが、彼の魅力はまず足元のボールテクニックがGKのなかで傑出している点だと思います。

 近年、GKも組み立てに参加する戦術が世界的に標準化してきて、GKであっても足元の技術が求められるようになっています。彼はその潮流が生まれる前から、日本のGKのなかで足元の技術はトップ・オブ・トップの選手でした。

 とりわけパントキックの正確さはずば抜けて高かったですし、彼が起点となって大きなチャンスが生まれるシーンをたくさん見てきました。私も試合中に思わず「すごいな」と漏らしてしまうこともありました。

 それまでは、GKのキック精度やいいカウンターというのは、レフェリーはあまり気にしなくても大丈夫でした。

 でも西川選手の場合その一発があるので、彼がボールを持ったらすぐに戻る準備をしなければいけないという認識に変わりました。そこが遅れてしまうと、カウンターからゴール前でなにかあった時に間に合わず、判定ができなくなってしまうからです。

 GKが攻撃の起点になる時代の先駆け的な存在で、いまなお足元の技術は彼がトップだと思っています。

 俊敏さ、跳躍力も彼の優れた能力でしょう。シュートを打つ側からすれば「ここを狙えば入るだろう」というコースを、彼の身体的能力によって止めてきた場面を幾度となく見てきました。183cmとGKのなかでは大きいわけではないですが、それをカバーできる跳躍力は大きな魅力だと思います。

 また "バタバタしない"というのは、いいGKの要素だと思っています。昔で言えば元ドイツ代表のオリバー・カーンのようにどっしりと構えられると、相手にとってはプレッシャーがかかります。西川選手もどっしりと構えられて、なおかつ躍動感もある。静と動が両立する特別なGKですよね。

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