家本政明がレフェリー視点で明かす、「これはすごい!」と思った現役Jリーガー5人 (4ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

レフェリーとも駆け引きをしてくる

家長昭博(MF/川崎フロンターレ)

 家長昭博選手は、ボールの持ち方が独特です。ボールを受ける時に必ず半身になりながら腕を上手に使って、ファールにならない範囲で相手をブロックしつつ距離を作るので、相手は飛び込めない、寄せきれないわけです。

 そんな懐具合を見ながら、ドリブルするのか、間やタメを利用して味方を使うのか、そういうことを考えていて常に視線が上に向いている選手ですよね。ゲームをコントロールする力が高い上に、点を決める能力もある。右サイドでタメておきながら中央にすっと入ってきてシュートを決めてしまうシーンはたくさん見てきました。

 テクニックレベルは当然のことながら、空間把握能力も抜群に高い選手だと思います。運動強度的に少し限定されるので、監督によって好みがあるかもしれませんが、プロ選手としてすごく魅力的で、人を魅了するテクニックとプレーを表現できる選手です。

 次になにをしてくれるんだろうと、レフェリーとしても彼の試合に関われるというのは楽しいものでした。彼はファールを受けた時と、ファールをもらいにいく時の癖が本当にわかりやすかった。こちらをチラッと見てきて、ファールを取ってもらえなかったら次はもう少し変えてみようという感じで、レフェリーとも駆け引きをしてくる選手でした。

 ファールを取ってもらえないと、激怒する選手はたくさんいますが、そうやって判定の具合で様子を見ながら駆け引きできる選手は意外と少ないです。家長選手は取ってもらえなかったからといって、こちらに突っかかってくることはなかったですね。

 判定の基準というのは、常に一定でなければいけないわけですが、その日の試合の状況などでどうしてもレフェリングにも幅が出てしまうものです。彼はそうした駆け引きのなかで、その日のファールのラインを見極めて、自分のプレーを考えるという思考力が高くて、非常にクリエイティブな選手だと思いました。

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