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元レフェリー・家本政明が挙げた印象深い元Jリーガー5人。「人格者」「ずるいプレーなし」「視野から消える」名手たち (2ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

荒いプレー、ずるいプレーが一切なかった

中澤佑二(DF/元横浜F・マリノスなど)

 中澤佑二選手は、いろんな意味で日本人離れした選手でした。高さやフィジカルの強さはもちろん、運動量もあるし、人柄も本当に優れた選手で、彼が怒っているところを見たことがありません。

 それは私が担当した以外の試合でもそうです。いつも冷静で、少し笑みを浮かべながらレフェリーと会話ができる選手でした。彼との会話で印象深いのは、彼は反則を取られると必ず判定基準について質問してきました。

「タイミング?」「力加減?」「どのくらいだったらOK?」とか、とにかく判定の基準を聞いて細部にまでこだわった選手の筆頭でしたね。

 だから常に熱くなることがなく、荒いプレーは一切なかったです。とくにDFは「そんなタックルするの」というシーンはどうしてもあったりするものなんですけど、彼にはそれがない。

「ここは行きそうだな」という場面でも行かなかったので、「なんで行かなかったの?」と聞いたこともあります。彼は「行っちゃだめでしょ」と。いわゆるプロフェッショナルファールとか、テクニカルファール、苦し紛れのファールというのがほとんどなかった。クレバーで、相手にダメージを与えるような守り方は、彼の美学ではないんでしょうね。

 ずるいとか、悪いプレーをせずにクリーンにボールを奪う、相手に競り勝つというのが彼の求めるスタイルだったと思います。

 引退する少し前くらいからスピードの衰えはどうしてもあって、それで苦労している様子はありました。でも彼はその都度、自分の能力をしっかりと把握して、リスクヘッジができていたので、裏を取られるとか、間を抜けられるシーンをあまり見たことがありませんでした。

 身体能力だけでなく、トータルで本当にいいDFで、見本中の見本である選手のひとりだとずっと思っていました。

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