鹿島アントラーズ、完敗でも十分に見えた2つのポジティブ要素。王者相手に課題も露わ

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 J1第2節、鹿島アントラーズは川崎フロンターレに0-2と敗れた。

 鹿島は前節、ガンバ大阪に3-1で勝利。最高の形でホーム開幕戦を迎え、昨季王者を迎撃する態勢は整っていたはずだったが、連勝とはならなかった。

 敗因は、はっきりしている。前半の17分までに2点も献上してしまったことだ。

 とりわけ、キックオフから2分足らずで与えた1点目が痛かった。

 川崎がさして厳しいプレッシャーをかけてきたわけでもないのに、DF関川郁万が自陣で川崎のFW知念慶にボールを奪われ、そのままシュートを決められて失点。軽率なパスミスは、あまりにも高くついた。

「ミス自体は気にならないが、臆病なまま前半を過ごしたことに悔しさが残る」

 いまだコロナの水際対策の影響で来日ができていないレネ・ヴァイラー新監督に代わり、監督代行を務める岩政大樹コーチがそう語ったように、前半の鹿島は悪い流れに飲み込まれたまま、大量失点につながりかねないピンチにさらされ続けた。敗戦は当然の結果だっただろう。

 しかし、後半の内容は悪くなかった。

 岩政コーチは、「後半は(川崎を)追い詰めるところまではいったが、得点までいかなかった。川崎の強さを打ち破れなかった、ということ。今日は僕たちの負け」と潔かったが、90分を通して試合を振り返れば、鹿島に案外悪い印象は残っていない。

 結局はノーゴールに終わったにもかかわらず、だ。

 その理由は、主にふたつ。まずは、柔軟な戦術変更が挙げられる。

 鹿島はこの試合、MFをボックス型に配した4-4-2でスタートしたが、後半は同じ4-4-2でも、中盤をダイヤモンド型に変更。これによって、MFディエゴ・ピトゥカがより高い位置でプレーできるようになったばかりでなく、両サイドMFも窮屈そうにプレーしていた前半とは打って変わり、相手の間でパスを受けたり、DFラインの背後への飛び出しを増やしたりと、自由に動くことができるようになった。

 そんな中盤の活性化に引っ張られるように、両サイドバックも高い位置で攻撃に加われるようになり、攻撃には明らかな厚みが生まれていた。鹿島の後半の反撃が、システム変更を引き金としたものだったことは間違いない。

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