槙野智章に涙は似合わない。新天地ヴィッセルではエンターテイナーとしても「浦和でできなかったことを実現できる」 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by (C)VISSEL KOBE

【記録よりも記憶に残った選手】

 やはりこの男に、涙は似合わない。"お祭り男"にふさわしい、浦和でのフィナーレだった。

 アジア制覇の歓喜をはじめ、浦和での10年間ではさまざまな想いを味わった。そのなかでも最後の試合こそが、浦和での最高の思い出となったのだ。

「タイトルも獲ったし、タイトルを逃した試合もたくさんありました。アジアチャンピオンになった時の雰囲気も忘れられないですね。いろんなことを経験しましたけど、やっぱり最後のゴールは一生忘れられないと思います」

 2012年に浦和にやってきた槙野は、当時、「このチームを変えたい」と決意を語っていた。果たしてこの10年間で、その目的は果たせたのだろうか。

「どうですかね。ただ、記録よりも記憶に残った選手かなと思っています。よくも悪くも浦和の男だと思ってもらえたし、槙野智章って浦和レッズの選手だよね、と思ってもらえた10年だったと思います。

 賛否両論ありながらも、すべてはチームのため、チームを強くするためと考えて、いろいろ行動してきたという自負もあります。たかが10年と思うかもしれないですけど、僕にとっては本当に中身の濃かった10年でした」

 浦和での10年を経て、槙野が新たなチャレンジの場所として選んだのが、ヴィッセル神戸である。その理由について「Jリーグチャンピオン、アジアチャンピオンを目指せる環境、選手のクオリティがあるということが一番惹かれた部分」と語る。

 一方で、エンターテイナーの槙野らしい発想も、そこにはある。

「サッカーを盛り上げたいと日頃から言っているなかで、そういう仕掛けができるアイデアを持っているクラブだということも、神戸に決めた理由のひとつです。浦和ではできたこと、できなかったこともあるなかで、そのできなかったところを実現できるクラブだと感じました。

 アイデアを持っていろんなことにチャレンジしているし、Jリーグを盛り上げる、サッカーを知ってもらえるきっかけ作りをいろんな形でやっているところに、神戸の魅力を感じますね」

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