今季J1の優勝争いは面白くなる――そんな予感を抱かせた浦和レッズの完勝 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • スエイシナオヨシ●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi

「僕にとって、浦和レッズで初めての公式戦。楽しみ、不安、プレッシャーがあったなかで、ひとつ勝てたのは大きな勝利」

 本人はそう語り、安堵の様子をうかがわせたが、状況に応じて自在にシステムを変化させるスペイン人指揮官の戦い方のなかでは、特に中盤の選手に細かい戦術理解が求められる。

 徳島ヴォルティス時代にも長くロドリゲス監督の下でプレーし、「監督のアイデアは理解しているつもり」と語る岩尾の存在は、今後さらに重要度を増していくに違いない。

 戦術的な柔軟性の高さを見せたばかりか、90分を通して川崎相手にプレー強度で劣ることはなく、しかも選手層は確実に厚くなった。

 今季J1において浦和が優勝候補のひとつであると、見事に証明された一戦だっただろう。

 とはいえ、ならば、川崎は優勝候補の前評判を裏切ったのかというと、そうではない。

 ロドリゲス監督が「今回は選手の頑張りがこういう結果につながった」と言いつつ、「欲を言えば、もっとボールを持って主導権握り、敵陣ゴール近くでプレーする時間を長くしたい」とも語っていたが、裏を返せば、それを川崎が許さなかったということである。

 すでに記したように、浦和のプレスが試合序盤で収まって以降、圧倒的に長くボールを保持し、敵陣でゲームを進めていたのは川崎である。

 川崎の鬼木達監督が「主導権を握っているようで、多くのチャンスを作れたかというとそうではない」と話しているとおり、決定機が少なかったのは確かだが、だからといって、攻めあぐねている印象もさほど受けなかった。

 なぜなら、浦和が築く守備ブロックの間で、巧みにトライアングルを形成し、パスをつないでペナルティーエリア内への進入を企てる。そんな際どいシーンは数多く見られたからだ。

 鬼木監督も「背後へのランニングや仕掛けが少なかった。自分たちからアクションを起こして、人を攻略したり、スペースを作ったりすることが必要」と課題を指摘しながらも、「この時期によくあること」と、淡々とした様子で試合を振り返っていた。

 川崎で指揮を執って6シーズン目。経験に裏打ちされた余裕がうかがえる。

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