襲いかかるラモス! 永井秀樹監督が映像で選手に闘争心を注入→ヴェルディの連勝が始まった (2ページ目)
第16節の相手は、ブラウブリッツ秋田。秋田は、相手守備陣の背後にボールを供給し、前線からハードワークを仕掛ける、言わば泥臭く戦うチームで、「巧さ」や「賢さ」が持ち味のヴェルディとは対照的な特徴を持っていた。しかし「自分たちとは違う強みがあるチームだからこそ、学べることも多いはず」と永井は考えた。
同時に、「熱量の足りなさを感じて負けたあとだから余計、どんなことがあっても勝たなければならない試合になる」とも受け止めていた。
「秋田戦に向けては、巧さ、賢さは忘れてはいけないが、勝利に対する執着心をより重視して準備した。もちろん戦術を考えることが監督としての仕事。プランがなければ草サッカーと同じ。でも勝利に対する執着心がなければ、どれだけ優れた戦術も生かされない。秋田戦ではそれは特に意識した」
選手たちの勝利に対する執着心を引き出すために永井が考えた手段。それは、「ミスター・ヨミウリ」「ミスター・ヴェルディ」と呼ばれたクラブの象徴、ラモス瑠偉氏の現役当時を映像で選手に見せることだった。
「選手たちの潜在意識にある強さを、どうすれば引き出せるか。自分の現役時代も振り返って考えた時、その大切さを一番わかりやすく表現してくれたお手本がラモスさんだった。
当時のヴェルディの選手は、サッカーがうまいのは当たり前で、それ以上に負けん気の強い者ばかりだった。それは読売クラブの頃からの伝統で、ラモスさんや松木(安太郎)さんに当時について伺っても、例えば日本リーグ時代、ライバルの日産自動車と対戦すればスポーツというよりも喧嘩だったらしい。
松木さんは水沼(貴史)さん、小見(幸隆)さんは木村(和司)さん、都並(敏史)さんは金田(喜稔)さんに対して、『削られたら削り返せ。絶対に負けるな』みたいなね。
プロまで上り詰めた選手は、どれだけ大差で負けている試合でも、『今日は勝てなくても仕方ない』とは絶対に考えない。『気合いや根性論なんて話しても、今の若い選手には伝わらないよ』と言う指導者もいる。でも自分はそうは思わない。気合いや根性のない選手がプロになれるわけがない。もしそう感じるとすれば、それは指導者が引き出せていないから。『今の自分は彼らの力を100パーセント引き出せているか』と猛省した」
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