17歳スタメン、15歳デビューで快勝した永井ヴェルディの未来戦略 (6ページ目)

  • 会津泰成●取材・文 text by Aizu Yasunari
  • photo by Getty Images

 加えて、熾烈な競争下にあっても、橋本はサッカーを通じて人としても成長していることを補足しておきたい。開幕戦後のインタビューで橋本は、ジュニアユース時代に影響を受けた存在として、蓮見知弘監督、森勇介コーチ、佐伯直哉コーチの3人の名前を挙げ、感謝の気持ちを表現するとともに、次のように話した。(以下、東京ヴェルディ公式HPより抜粋)

――試合後にはゴール裏でサポーターに挨拶をしていましたが、どんなやり取りがありましたか?

 上手いことや気の利いたことは言えないので、とにかくデビューできて嬉しかったということ。あとは僕だけの力でデビューしたわけではなく、2種登録してもらったわけではないので、小4からここまで家族やコーチなど色んな人たちがサポートしてくれた結果、2種登録、今日のデビューがあったので、サポーターの方にも感謝しかないです。

 蓮見監督、森そして佐伯コーチ、3人はいずれも、現役時代はヴェルディでプレーし、永井とも一緒にプレーした。永井は「彼らが情熱を持って磨き上げてくれたからこそ、今の彼(橋本)がある。それは自分も強く実感しているし、感謝したい」と話す。

 ヴェルディというクラブの歴史、スタイル、そして価値を体現してきた3人のような指導者の存在は、まさに、未来のヴェルディの育成には欠かせない。日頃、永井は選手たちに「選手間の共通認識を高め、その優位性で勝負する」「現状維持は後退の始まり」と繰り返し伝えるが、それは「サッカーの試合に限らず、運営も含めたクラブのあり方も同じではないか」と考えている。

 日本でバルサのようなクラブ、下部組織から才能ある選手が次々と誕生するような仕組みを作りたいならば、育成年代の選手を支える体制とトップチームとの連携は不可欠であり、今以上に風通しのいい組織づくりが大切だ。

 経営、運営、指導者、全員が同じ共通認識を持つこと。それが他クラブにはない、ヴェルディならではと言える特徴になった時、初めて本当の意味でのヴェルディ再建が始まる。

 橋本のデビューは、「同じ地図を持ち、実力さえあれば、年齢や経験に関係なくいつでもトップに昇格できる」と他の育成にいる選手にも希望の光を与えた。

 2021シーズン、永井は指導者として勝利という結果を追及すると同時に、第二、第三の阿野や橋本を誕生させるという仕事に取り組む覚悟でいた。

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