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佐藤寿人にあった幻の移籍話。「家族以外、誰にも言っていない」 (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「サンフレッチェでプレーできるのであれば、どんな役回りでもやりたい」

 自らの立場を理解し、チームのためにすべてをささげる覚悟で2015シーズンに臨んだ。

 そのひたむきな姿が指揮官の心を動かしたのだろうか。佐藤は開幕戦でスタメン出場すると、見事にオープニングゴールを決めている。結局その年、全試合にスタメン出場し、前年を上回る12ゴールを決めた。しかし、出場時間は2191分。1試合あたり62分程度にすぎなかった。

「あの年は僕が60分出て、拓磨と交代するというパターンでした。だから自分は、与えられた60分のなかで全力を出すことを考えていました。90分でやっていたものを、60分のなかでいかにやり切るか。拓磨とふたりで90分を戦っている感じでしたね。

 よく、『毎回、途中で代えられてストレスにならないの?』って聞かれましたけど、まったくそんなことはなかった。森保さんは僕を信頼して、スタートから使ってくれた。その想いに応えたいという気持ちしかなかったですね。それはやっぱり、2014年のことがあったから。気持ちが整理できていましたね」

 3度目の優勝を成し遂げた佐藤だったが、一方でキャリアの終焉を徐々に感じ取っていたという。34歳で迎えた2016シーズンを振り返り、佐藤は「そろそろ終わりに向かおうかなと考えていた」と明かした。

「常にメンバーには入っていたんですが、ピッチに立つ時間がどんどん減ってきた。筋肉も張りやすくなっていて、身体の部分の変化を感じた年でしたね」

 引退を意識し始めた頃、佐藤は同じストライカーとしてリスペクトし、信頼を寄せていた播戸竜二に会う機会があった。

「バンさんとは昔から話をすることが多くて、その時も自分の想いを伝えたんです。そしたらバンさんは『わざわざ自分でやめる方向に向かわなくてもいいんじゃない? 選手だったら、どうピッチで勝負するか。結果的に引退する時が来るわけだから、わざわざ自分からそっちに向かわなくていいんちゃう?』って。それを聞いて、たしかになと。自分から行く必要はないなと思ったんです。あの時はバンさんが思いとどまらせてくれましたね」

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