現役のオシムチルドレン、水本裕貴。35歳の今も忘れない名将の声 (5ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

 水本が2020年シーズンにプレーしたゼルビアを率いるランコ・ポポヴィッチは現役時代、オーストリアのシュトルム・グラーツでオシムの指導を仰いでいる。水本にとっては"オシムチルドレン"の先輩にあたるわけだ。

「選手にたくさんの選択肢やアイデアを提示してくれるところ、前向きなトライや意図の見えるミスに対して全然怒らないところは、オシムさんに似ていますね。ポポさんも『どんどんリスクを冒してチャレンジしろ』と言ってくれる。オシムさんの話もしました。『俺たちが現役の頃は、もっと練習がキツかったんだぞ』と言ってましたね(笑)」

 振り返れば、サンフレッチェ時代にも水本は、オシムの薫陶を受けたミハイロ・ペトロヴィッチ監督(オシムがグラーツ監督時代に同クラブのコーチ)の指導を受けている。これも何かの縁なのだろうか。

「オシムさんも、ミシャさんもいいプレーに対して『ブラボー!』と言うんですけど、ポポさんも言うんですよ。それが懐かしいというか。いつまで経っても『ブラボー!』は欲しいですね」
 
 オシムから学んだ哲学、生き方を水本は今も大事にしている。

 野心を持て、満足するな――。

 その言葉を胸に、水本は36歳となる21年シーズンも、ゼルビアでボールを追い、走り続ける。

(第7回につづく)

■水本裕貴(みずもと・ひろき)
1985年9月12日生まれ。三重県出身。三重高校から2004年にジェフユナイテッド市原(当時)に加入。ルーキーイヤーから出場機会を得て成長し、サンフレッチェ広島時代の2012年シーズンにはJリーグベストイレブンに選出された。日本代表には2006年に初選出され、2015年までに国際Aマッチ7試合に出場。現在はJ2町田ゼルビアの主力として活躍している。

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