高校サッカー選手権のロングスロー、あれってファウルじゃない? (4ページ目)

  • 清水英斗●文 text by Shimizu Hideto
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

◆サッカーPKあるある。決める時、外す時>>

 あとは誰も触れずに流れていくボールを、味方GKに任せる。ロングスローに対しては、最強の空中戦プレーヤーであるGKが積極的に出て行けばいい。捕球してパントキックでカウンターか、あるいはパンチングで大きく飛ばすか。入ってくるボールに勢いがないのだから、GKには広い守備範囲を期待できる。

 もし、GKの動きを邪魔する相手がいたら、レフェリーにアピールしつつ、GKを守る選手もつける。両ゴールポストに人を置くのも忘れずに。対策さえ打てば、ロングスローの優位性をひっくり返すことは十分可能だ。

 ただ、こうした競り合いの駆け引きは、プロでも下手な選手が少なくなく、高校3年生の時点でどこまで身につけられるか、引いては何の習得に時間を使うかという話になる。

 そうなると、より頻度が高いインプレー、足元のプレーのほうが優先されるため、ロングスロー対策はどうしても盲点になりがちだ。とはいえ、原理はファーサイドへのクロス対応と似ているので、うまく対策できるチームはもっと増えてもいいのではないか。

 さて、理由の2つめにいこう。それは、アマチュアだからだ。

 そもそもロングスローに限らず、高校サッカー選手権はFKなどを含めたセットプレー全般に妙手が多い。そうやってセットプレーに時間をかけると、アクチュアルプレーイングタイムが削られ、試合はダイナミズムを欠くかもしれないが、そんなことに彼らが責任を感じる必要はない。

 あるいは、ひたすらロングボールの応酬になり、面白みがまったくない試合も少なくないが、それも関係ない。彼らは自分のために、自分が思うようにプレーするだけ。それがアマチュアだ。

 一方、プロ選手は自分以外のファンやサポーター、地域の人々など多くの存在を背負い、対価をもらって他者のためにプレーする。勝利はもちろんのこと、彼らから「期待されるプレー」も意識しなければならない。仮にロングスローが自分たちのファンからネガティブに受け止められているなら、その戦術は再考に値する。他者のためにプレーするのが、プロだからだ。

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