とんねるずも指導した高校サッカーの名伯楽。選手が勝手に育つ練習とは
御歳、81。指導歴は今年度で56年目を迎える。
帝京高校(東京)の監督として選手権を6回、インターハイを3回制した古沼貞雄氏。今年も2008年から携わる矢板中央高校(栃木)のジャージを身に着け、冬の檜舞台に挑んでいる。
矢板中央のアドバイザーを務める古沼貞雄氏。チームは4大会連続でベスト8以上の成績を挙げている アドバイザーという立場で、公式戦や練習試合には都内から必ず駆けつけ、試合の前後には選手たちに声を掛け、培ってきた知恵を惜しみなく伝える。その姿は、今も昔も変わっていない。長年の経験をチームに伝えてきたことが、矢板中央の近年の好成績につながったのは間違いないだろう。
なぜ80歳を超えても現場に立ちつづけるのか。「サッカーが好きなだけだよ」と、古沼氏の答えは至ってシンプルで、子どものような純粋な気持ちが原動力になっているという。ただ、それだけで高校サッカー界にいるわけではなく、指導者たちに伝えたいことがあるという。
「第一線で指導されている監督やコーチも、『人生はサッカーだけではない』と言っているとおり、サッカーでプロを目指すのは目標だけど、永遠にできるわけではありません。サッカーをやりながら自分の生き方を探すことが大事です。今、私がアドバイザーを務めている矢板中央高校の髙橋健二監督も、保護者会でサッカーを通じ、『世の中に通用する人間づくり』をしたいと言っていますよ。それは今も昔も変わらないんです」
古沼氏が関わってきた選手たちは1000人を超える。そのなかでサッカー選手になった者は100人強。プロの世界に足を踏み入れられなかったからと言って人生が終わりではなく、むしろスタートラインに立ったにすぎない。
教え子は様々な分野で大成し、起業する者もいれば、サラリーマンとして立派に働いている者もいる。例えば、芸能界に活路を見出した木梨憲武氏もそのなかのひとりだ。帝京高校・野球部の石橋貴明氏と、とんねるずを結成し、未知なる世界に飛び込んだ。
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